JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS04] [EE] Subduction zone dynamics from regular earthquakes through slow earthquakes to creep

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:金川 久一(千葉大学大学院理学研究科)、小原 一成(東京大学地震研究所)、Demian M Saffer(Pennsylvania State University)、Wallace Laura(University of Texas Institute for Geophysics)

[SSS04-P58] Frictional properties of hydrated clay minerals and its application to tsunami earthquakes

*野田 雄太1片山 郁夫1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:tsunami earthquakes, subduction zone, clay minerals

[はじめに]
 津波地震とは、地震動から予測される津波に比べ大きな津波を発生させる地震であり、その発生原因には、ゆっくりとした断層のすべりが関係していると考えられている。津波地震は沈み込み帯の浅い領域で発生しており、そのプレート境界には粘土鉱物が多く存在していることから、津波地震の発生メカニズムを考える上では粘土鉱物の摩擦が重要となる。Seno (2002) は、間隙水圧によって沈み込み帯浅部の有効垂直応力が減少することで粘土鉱物が不安定なすべり挙動を示すため地震のすべりが浅部まで伝播すると考えた。しかし、Saffer and Marone (2003) などの先行研究では、水のない状態での粘土鉱物の摩擦特性を報告しており、水和した粘土鉱物の摩擦特性についてはよくわかっていない。そこで、本研究では、水に飽和した環境で粘土鉱物の速度急変による摩擦試験を行い、粘土鉱物の摩擦特性が水和状態によってどのように変化するか調べた。また、そのデータを基に津波地震が発生するために必要な沈み込み帯の条件について考察した。
[実験手法]
 本研究では、断層ガウジ試料として異なる陽イオンをもつスメクタイト(NaモンモリロナイトとCaベントナイト、サポナイト)を用いて摩擦実験を行った。乾燥条件の試料は、24時間真空炉で乾燥させたものを用いて実験を行い、水和条件では水槽内で摩擦実験を行った。垂直応力は10, 20, 40, 60MPa、すべり速度は0.3, 3, 33µm/sに設定し速度急変による摩擦試験を行い、摩擦の速度依存性を解析した。速度依存性は、速度の増加に伴い摩擦係数が上昇するものを速度強化、反対に速度の増加に伴い摩擦係数が低下するものを速度弱化とし、速度ごとの定常摩擦の違いから決定した。
[結果と考察]
 実験結果から粘土鉱物の摩擦係数は、乾燥条件と水和条件とで大きな差があり、摩擦特性にも大きな影響を与えることが分かった。乾燥条件では、Naモンモリロナイトとサポナイトは常に速度強化を示すのに対し、Caベントナイトは低垂直応力下(≦40MPa)で速度弱化、高垂直応力になるにつれ速度強化を示す傾向がみられた。水和条件では、いずれの試料においても低垂直応力下( ≦ 20MPa)では速度依存性が小さく、ほぼニュートラルな摩擦特性を示し、高垂直応力では速度強化を示した。
 沈み込み帯において、間隙水圧の下で粘土鉱物が存在すると、摩擦の速度依存性はニュートラルに近い性質をもつことが期待される。そのように、沈み込み帯の浅い領域がニュートラルな摩擦特性であれば、深部でのアスペリティ破壊によって浅部でのすべりが誘発されるため津波を伴う地震が発生すると予想される。また、速度弱化の挙動ほどすべりが加速されないため、ゆっくりとした断層のすべりとなると考えられる。このように、水が存在する環境下での粘土鉱物の摩擦特性は津波地震の特徴と調和的である。