JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS05] [EE] 統計および物理モデルに基づく地震活動予測

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 A05 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:Schorlemmer Danijel(GFZ German Research Centre for Geosciences)、平田 直(東京大学地震研究所)、Matt Gerstenberger(GNS Science)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、庄 建倉(統計数理研究所)、座長:鶴岡 弘(東京大学地震研究所)

16:45 〜 17:00

[SSS05-12] 最大の地震と2番目に大きな地震のマグニチュードの差に基づく地震活動予測

*山科 健一郎1 (1.none)

キーワード:earthquake forecast, magnitude difference, the largest earthquake, the second largest earthquake

筆者はかつて,それぞれの地震系列について最大地震と次に大きな地震のマグニチュードMの差をとって統計的に検討し,その差が小さな系列は,もっと大きな地震が起こる予兆かもしれないことを示した(山科,JPE,29,1981a;Maurice Ewing Ser.4,1981b).例えば,その差が0.4以下(ただし2番目の地震が最大地震に先行するとき)または0.2以下(逆のとき)の場合,引き続いてもっと大きな地震が起こる確率は20~30%程度であった.これに対して,その差が大きいと,もっと大きな地震が起こる確率はごく小さい.

それ以後30年以上が経過して,たくさんの事例が追加された.例えば2008年茨城県沖地震(M7.0)はM6.4,M6.3に先行されたが,引き続いてM7.0前後の地震が起こるのではないかと事前に懸念することができた.2016年の熊本県の地震(M7.3)の場合も,本震に先行してM6.5,M6.4が起きている.一方,イタリア・ラクイラ地震(M6.3)でもM4.1(3月30日),M3.9(4月5日;本震の数時間前)が先行しているから,大きな被害を出した本震について,発生の可能性を指摘することに利用できたかもしれない.

典型的な場合,最大余震は,本震よりもかなり小さい.最大と2番目に大きい地震のMの差は,その活動が通常の本震余震活動とみなせるかどうかを知るよい指標なのだろうと考えられる.Mの差に基づく活動予測の確度は大きくないが,いろいろな観測データを詳しく見直したり,不測の災害への備えについて点検するきっかけとして利用したりできれば意義深い.なお,最大と2番目の大きさの地震のMの差について,野村俊一博士他が詳しい統計的解析を進めつつある.こうした議論がいっそう発展することを期待したい.