JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS08] [EE] Earthquake Modeling and Simulation

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 A02 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:福山 英一(防災科学技術研究所)、John B Rundle(University of California Davis)、深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、座長:古村 孝志(東京大学地震研究所)、座長:徐 世慶(防災科研)

16:30 〜 16:45

[SSS08-17] 地震波と津波を考慮した海面変位と浸水の理論計算手法:南海トラフ巨大地震モデルでの計算例

*齊藤 竜彦1馬場 俊孝2武村 俊介1福山 英一1 (1.独立行政法人 防災科学技術研究所、2.徳島大学大学院理工学研究部)

キーワード:Seismic Wave, Tsunami, Simulation

巨大地震の震源域内で波動場を観測する場合,地震波と津波が同時に観測点に到達することに注意が必要である.これまでは震源域から離れた場所での観測を想定していたために,そこでは伝播速度の遅い津波は地震波到達から十分に遅れて観測点に到達するために,津波解析をする場合には,地震波の影響を考慮する必要が無かった.しかし,震源域内観測では地震波と津波が同時に到達するために複雑な波動場が形成される.震源域内で観測される津波記録を正確に解釈するためには,地震波の影響を考慮する必要がある.
例えば,Saito and Tsushima (2016)では,地震波の影響をも考慮した海底水圧記録の理論合成方法を提案し,震源域内観測による即時津波予測手法のパフォーマンスを評価している.一方で,海底面における海底水圧観測だけでなく,震源域内の海面変位の観測の実現が期待できる.例えば,Inazu et al. (2016)では,船舶に搭載されたGPSが津波による海面の上下変位を記録する可能性を示し,船舶GPSを利用した即時津波波源推定法を提案している.このような場合,地震波と津波の影響を考慮した海面変位の計算が必要となる.また,海面変位のみならず沿岸の浸水過程を計算することも重要であるが,これらを同時に満足する手法はこれまで無かった.
そこで本研究では,地震波と津波を考慮できる海面変位と浸水過程を計算する新しいアルゴリズムを提案する.南海トラフ巨大地震を例として,海面変位記録と浸水域を理論計算する.測地データと室内実験の知見から構築された動力学的断層破壊モデル (Hok et al. 2011)の計算結果をもとに,3次元差分法によって海面・地表面における地震波動場を計算した (e.g.,Takemura et al. 2016).この海面変位場に重力による寄与を取り入れるため,換言すれば,重力を復元力とする津波伝播を引き起こすために,非線形長波津波シミュレーションを実行した.津波計算では世界最高レベルでの高分解能での浸水計算をと入りいれている (Baba et al. 2015).地震発生最中の時間において,地震波が海面変位に与える影響が現れ,地震波が津波解析のノイズとしてふるまうことになる.ただし,地震波が海面変位による津波計測にノイズとして与える影響は,海底水圧計による津波計測の場合に比べて小さい.同一モーメントの場合には,破壊の時定数が短くなるほど,モーメントレートは大きくなるので地震波の影響は大きくなる.そのため,震源過程に短周期成分が含まれるほど,地震波成分の海面変位に与える影響が大きくなる.一方,津波浸水域は地震波成分の影響はほとんどない.本研究によって,地震波成分の影響を含んだ海面変位の合成記録と津波浸水域のシミュレーションデータセットが与えられた.このデータセットを利用することで,津波浸水予測アルゴリズムの開発・テストを効果的に実施することができるであろう.