JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] [EJ] 地殻変動

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、座長:西村 卓也(京都大学防災研究所)、座長:中尾 茂(鹿児島大学大学院理工学研究科地球環境科学専攻)

09:45 〜 10:00

[SSS10-04] 2016年10月21日鳥取県中部の地震(M6.6)の地殻変動

*西村 卓也1橋本 学1細 善信坂上 啓2伊東 優治2 (1.京都大学防災研究所、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:地殻変動、GNSS、InSAR、山陰ひずみ集中帯

1.はじめに
山陰地方には,海岸線に沿うように微小地震の活発な領域が存在し,過去に1943年鳥取地震(MJMA7.2)や2000年鳥取県西部地震(MJMA7.3)などの大地震が発生したことが知られている.西村・他(2014)は,国土地理院のGEONET観測データから,微小地震の活発な領域とひずみ速度の大きい領域がほぼ一致することを指摘し,「山陰ひずみ集中帯」と呼ぶことを提唱した.
我々は山陰ひずみ集中帯における詳細地殻変動の解明を目指して,2014年の夏から冬にかけて鳥取県と岡山県に13点のGNSS観測点を新設した.観測点は,既存のGEONET観測点と併せて,ひずみ集中帯を横切るように鳥取県東部,中部,西部に南北方向の稠密線状アレイとなるように配置し,観測を継続していた.
そのような中,2016年10月21日14時7分にMJMA6.6の地震が鳥取県中部で発生し,鳥取県倉吉市,湯梨浜町,北栄町で震度6弱を観測した.この地震の震源域は,鳥取県中部に構築したGNSS稠密アレイと交差しており,この規模の地震としては前例がないほどの地震前・地震時・地震後の地殻変動が詳細に捉えられた.本講演では,稠密GNSS観測とSAR干渉解析によって捉えられた鳥取県中部の地殻変動について報告する.
2.地震前の地殻変動
 山陰ひずみ集中帯における地殻変動の特徴は,南部の瀬戸内海側に対してひずみ集中帯より北側が相対的に東へ動いていることである.岡山県中部を固定して2014年から2016年の地震前の平均的速度を見ると,鳥取県の日本海沿岸では約5mm/年の東向きの変動が見られ,その変動は南ほど小さくなる.岡山県に入ると変動速度がほぼ0となり,瀬戸内海沿岸までは顕著な変動は見られない.この分布から,鳥取県を東西に横断する幅20km程度の領域で右横ずれ運動をひずみ集中帯があることが読み取れる.このひずみ集中帯内でMJMA6.6の地震が発生した.
3.地震時の地殻変動
 地震時の地殻変動は,鳥取県及び岡山県の観測点で観測された.最大の地殻変動を観測したのはKRNS観測点で,水平変位は東南東方向へ9cmに達し,4cmの沈降も観測された.地震時地殻変動と地殻変動から推定した震源断層モデルを図に示す.この地震の余震分布は北北西—南南東方向に並んでいるが,GNSSデータより,KRKH観測点とKRNS観測点の間を通るほぼ鉛直な震源断層が推定され,その位置は余震分布とほぼ一致している.この断層で約90cmの左横ずれのすべりが生じ,モーメントマグニチュード(Mw)は約6.2と推定された.また,ALOS-2データの干渉SAR解析によっても,横ずれ断層による4象限型の変動パターンを示唆する地殻変動の面的分布が明らかとなっており,GNSSデータから推定された断層モデルと調和的である.
4.地震後の地殻変動
余効変動は,地震直後の急激な変動に比べるとかなり減速したが,2016年12月末までに最大約2cmの達している.余効変動の変位パターンは,地震時変動と似ているが,地震時変動と比較すると震源断層近傍のKRKH観測点とKRNS観測点での変動量が周辺の観測点に比べて大きいという特徴がある.このような特徴は,浅部での余効すべりによって説明できると考えられる.