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[SSS10-13] 東北地方の活火山におけるGNSSデータの統合解析
キーワード:地殻変動、GNSS、火山監視、余効変動、吾妻山
GNSS 測位技術を用いた火山監視は、近年、世界中の活動的な火山の現場で実践され、大きな成果を上げている。例えば、Eyjafjallajokull(アイスランド)の2010 年の噴火活動(Sigmundsson et al., 2010)、Santorini カルデラ(ギリシャ)の2011 年の火山危機(Newman et al., 2012)、El Hierro(スペイン)の2011-2012 年の噴火危機(Lopez et al., 2012)では、GNSS による地殻変動の解析により地下のマグマ供給系が明らかにされつつある。国内のGNSSを用いた火山監視は、気象庁などが火山近傍で行っている観測(連続およびキャンペーン観測)と山の麓のやや広域に展開された国土地理院のGEONET による観測の組み合わせによって行われている。これらのデータは、それぞれ別のシステムで独立に解析されることが多く、解析ソフトウェアや解析戦略、パラメータや基準点の取り方などの違いのために、両者の解の整合性には疑問が残る。火山の近傍から遠方まで均質な解を得るために、本研究では、気象庁と国土地理院のGNSSデータを統合し、統一した解析戦略とパラメータによって解析する。火山近傍と遠方のGNSS データは、それぞれ、地下浅部と深部の情報に敏感であるため、本手法は、火山の深部から浅部に至る全体場を統一的に評価することが可能である。解析には、Bern 大学の研究者らによって開発されたBernese5.2 (Dach et al., 2013)を用い、IGS精密暦を用いた24時間毎の後処理解析を行った。また、解はIGb08 基準点の座標値を用いてゆるく拘束した。東北地方の最近の地殻変動には、2011年の東北地方太平洋沖地震の大きな余効変動の影響が含まれているため、先行研究(例えばTobita (2016)など)を参考にこの影響を評価する。年周変動とプレート運動の推定には、Geirsson et al. (2006)の手法を用いる。統合解析の火山への応用例として、福島県と山形県の県境に位置する吾妻山の2014年―2015年の火山活動の検出を試みた。