JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] [EJ] 地殻変動

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、座長:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

14:15 〜 14:30

[SSS10-15] 地球内部力学を記述する方程式系の物理的基礎の確かな新しい形

*松野 太郎1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:地球内部力学、マントル対流とプレート運動、マックスウェル粘弾性体

プレートテクトニクスやマントル対流など固体地球の力学を支配する基礎方程式として、これまで長い間、地球内部は「マックスウェル粘弾性体」であるとの考えのもと、その力学を記述する方程式系が用いられてきた。しかし、「固体地球が長い時間スケールで粘性流体の力学に従う」と言う主張(Tarcotte and Schubert, 2002他多数)は現実に地球内部に適用される粘性の大きさ(例えば1021Psec)を考えると超光速の運動量拡散を意味し物理の原理に反して受け入れられない。地球内部が固体で鉱物として決まった結晶構造を持つ以上時間スケールに関わらず同じ弾性の法則に従うはずである。粘性流体とみなす根拠として岩石を含む固体のクリープと粘性流体の流れの類似性が考えられる(例えばMcKenzie, 1967他多数)。しかし、クリープは弾性歪の緩和による固体の塑性流動と解釈するべきで、それを直接表す方程式と弾性体の力学方程式とを組み合わせて基礎方程式系とするのが妥当である。こうした場合、伝統的粘弾性体力学方程式の粘性変位を塑性変位と対応付ければ伝統的方程式系と数学的にはそっくりな形となる。しかし、伝統的方程式系は物理的プロセスを正しく表現できていないので原理的に適用限界があるはずである。実際、近年の研究でマントルとプレートの力学を同時に扱う場合、基本的な変数として粘性流体速度を採用する従来型のシミュレーションでは固体であるプレートの振る舞いを表現し難いと指摘されている。新しい方程式系は力学方程式が固体のものであることによってこの問題が回避されるばかりでなく、地震(脆性破壊)のプロセスを取り入れるように拡張できるなど地球内部科学にとって重要な多くの問題を取り扱う共通の基盤となる可能性を持つ。