JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] [EJ] 地殻変動

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールB (国際会議場 2F)

コンビーナ:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、座長:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

14:30 〜 14:45

[SSS10-16] 地下水流動の観測に基づいて推定された断層破砕帯近傍の非一様な透水性構造

*向井 厚志1大塚 成昭2福田 洋一3 (1.福山市立大学都市経営学部、2.神戸学院大学人文学部、3.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:断層破砕帯、透水性構造、2016年熊本地震

断層破砕帯では,地震動によって透水性構造に変化が生じる場合があるが,それがどの程度の空間スケールで生じるものなのかについては明らかではない。本発表では,兵庫県南部にある六甲高雄観測室内の3点において地震動に伴う間隙水圧変化を観測し,断層破砕帯近傍の局所的な透水性構造の変化を推定した結果について報告する。
断層破砕帯はその周辺岩盤と比べて透水性が高いことから,地下水流動は主に破砕帯内で生ずると考えられる。そのため,断層破砕帯は均質な透水性をもつ一枚の板で近似することができる。向井他(2015)は,その内部を移動する一次元地下水流動をモデル化し,湧水量変化および間隙水圧変化から透水係数の変化を推定する方法を導出した。万福寺断層を貫く六甲高雄観測室での観測データにこのモデルを当てはめた結果,2011年東北地方太平洋沖地震の際に断層破砕帯の透水係数が地震後数ヶ月間にわたって低下したことが明らかになった(向井他,2016)。このように,断層自身が震源断層にはならなくても,外部から伝わってきた大きな地震動によって断層破砕帯の透水性構造が変化する可能性があると言える。
六甲高雄観測室では,湧水量計と水位計各1台を用いて地下水流動の連続観測を実施してきたが,地下水流動を空間的に把握することを目的に,2016年に2台の水位計を新たに設置した。その間隙水圧観測値と湧水量観測値を用いて透水係数の変化を推定したところ,2016年の熊本地震および鳥取県中部地震直後においても透水性構造が変化したことが確認された。しかし,その変化の大きさは,どの場所の間隙水圧観測値を用いるのかによって異なっており,透水係数の変化の程度が断層からの距離に依存することが示唆される。例えば,熊本地震の直後では,断層近傍で透水係数が約7%上昇したのに対して,断層から数10m離れた地点では,透水係数が約22%低下した。こうした違いは,地震動によって流出した泥分等によって生じている可能性がある。亀裂の大きな断層近傍の破砕帯では泥分等はそのまま流出するのに対して,断層からやや離れた亀裂の発達が十分ではない地点では泥分等が目詰まりを引き起こし,透水係数の低下をもたらしたことが考えられる。