JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] [EJ] 地殻変動

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS10-P10] ALOS−2/PALSAR-2で検出された2016年にイタリアで発生した地震の地殻変動

*安藤 忍1 (1.気象研究所 地震津波研究部)

キーワード:ALOS-2/PALSAR-2、干渉SAR、地殻変動、イタリアの地震

2016年のイタリアでは,M6クラスの地震が3回発生した(8月24日:深さ約4km,Mw6.2,10月26日:深さ約10km,Mw6.1,10月30日:深さ8km,Mw6.6).いずれもイタリア中部地方の都市Norcia近傍で発生し,震源付近では,多数の建物が崩壊し甚大な被害をもたらした.また,今回の震源付近近傍では,過去にもM6.0以上の地震が時々発生しており,最近では,2009年4月に,今回の地震から数十km南に離れたラクイラ周辺で,Mw6.3の地震が発生しており,やはり死者295人以上,負傷者1,000人以上等の甚大な被害が発生している.
イタリア国立地球物理学火山学研究所の資料によれば,当該地域の活断層は非常複雑で複数報告されている.その理由は,当該地域はアフリカプレートとユーラシアプレートが衝突し,互いに押し合っている地域であり,テクトニクス的にも地質学的にも複雑な地域であるためである.特に今回地震が発生したアペニン山脈付近では,局所的に東西方向に伸長する力が働き地震が発生している領域であり,震源過程解析による地震のメカニズム推定でも,いずれも正断層解が得られている.
2014年5月24日に打ち上げられた陸域観測技術衛星「だいち2号(ALOS-2)」は,高分解能なLバンドSAR衛星であり,全球的に常時観測を行っている.我々は,2016年に発生した3つの地震について差分干渉解析を実施し,地震に伴う地殻変動の検出を行った.また,震源過程解析で得られた滑り分布との比較を行い,断層面の推定を試みた.10月26日と30日に発生した地震では,震央の西側では西向きの,東側では東向きの変位が検出されたほか,震央付近では沈降成分が検出された.この結果,この地震のメカニズムは西傾斜の正断層であると推定した.
本解析で用いたPALSAR-2データの一部は,国土地理院が中心となって進めている防災利用実証実験(地震WG)に基づいて観測・提供されたものである.また,一部はPIXELで共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学地震研究所との共同研究契約によりJAXAから提供されたものである.PALSAR-2に関する原初データの所有権はJAXAにある.なお解析には,防災科学技術研究所の小澤拓氏により開発されたRINCを使用させていただいた.なお,干渉画像の処理過程においては,SRTM4.1を元にしたDEHMを使用し,地図の描画にはGMTを用いた.関係者各位におかれては,ここに記してお礼申し上げます.