JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] [EJ] 地殻変動

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS10-P18] 西南日本の地殻水平ひずみ:クリギング法を用いた局所変動抽出の試み

*折中 新1田部井 隆雄2塩見 雅彦1大久保 慎人2 (1.高知大学大学院総合人間自然科学研究科、2.高知大学理学部)

キーワード:地殻変動、西南日本、ひずみ、局所変動、クリギング法、GPS

西南日本の地殻変動場は,フィリピン海プレートの沈み込みに支配されながらも,変動様式は複雑である.沈み込みの方向がプレート境界である南海トラフの走向に斜交し,プレート境界面が強く固着していることにより,上盤側の西南日本弧は弾性圧縮変形を受けながら,同時に中央構造線を境に相対ブロック運動が生じている.また,九州中部や近畿地方には多数の活断層が存在し,断層面の固着状態によって周辺の変動場は局所的擾乱を受けている.このように,西南日本では「プレート運動起因の弾性圧縮変形と広域ブロック運動」と「活断層や地質構造に影響される局所変動」の両方が混在している.西南日本の地殻変動場の理解には,これらの定量的分離が必要である.本研究では,空間最適補間法で知られるクリギング法(間瀬・武田,2001)を用いたひずみ解析を行い,局所変動の抽出を試みた.クリギング法の特徴は,観測データ固有の空間従属性に従って,場を代表する広域変動と空間スケールの小さな変動の両者を適切にモデル化できる点である.本研究ではさらにShen et al.(1996)による空間平滑化処理を用いたひずみ解析も行い,手法間の違いを検証した.空間平滑化処理においては,距離減衰定数の値を15-35 kmの範囲で複数設定した.

解析には,近畿から九州へ至る569点のGEONET最終座標解F3解(2006-2009年)より算出した平均変位速度を使用した.ひずみ解析手法に関わらず,四国地方南部では,フィリピン海プレートの沈み込みに伴う北西-南東方向の0.15-0.30 ppm/yrの圧縮が非常に顕著である.四国西部から九州南部へかけて,圧縮方向は反時計回りに回転し,沈み込みの影響は徐々に減少する.また,太平洋側から日本海側へ向かって,圧縮の大きさは数分の1に減少する.空間平滑化法による結果と比較すると,クリギング法によるひずみ分布には局所的擾乱がより顕著に認められる.しかし,プレート沈み込みによる大きな圧縮変形に支配されて,中央構造線周辺や山陰地方に予想された,断層や地質構造に起因するであろう系統的な局所変動を検出するには至らなかった.GEONET点間の平均間隔は15-20 kmであり,局所変動の検出にはなお空間分解能が不足していると考えられる.その意味で,対象を限定してGEONETを補完する目的の稠密観測は,今後も重要な役割を持つと言える.