[SSS11-P08] 中国地方における散乱係数と内部減衰の推定(2)
キーワード:地震波エネルギー、散乱、内部減衰
観測された高周波地震波エネルギー密度の時空間分布を,輻射伝達理論の解と比較することにより,地下の散乱係数と内部減衰を分離して推定することが可能である。そのような方法の一つであるMultiple Lapse-Time Window(MLTW)法(Fehler et al., 1992; Hoshiba, 1993;Carcole and Sato, 2010)では,各地点で観測された地震波エネルギー密度を複数の時間窓で積分し,その空間変化を輻射伝達理論で解釈する。近年,齋藤・他(2013,2014,地震学会秋季大会)は,各時刻での地震波エネルギー密度の空間分布を複数の空間窓で積分した量を求め,その時間変化を輻射伝達理論で解釈することにより,散乱係数と内部減衰を推定する手法を提案した。また,その手法をHi-netで得られた中国地方の浅い地震の観測記録に適用した。佐々木・他(2015a, JpGU大会; 2015b, 地震学会秋季大会)はこの手法の改善と解析事例の追加を行い,中国地方周辺の平均的なS波(1-2 Hz)の散乱係数を0.002-0.0025 km-1と推定した。これはMLTW法に基づく同地域の過去の推定値と比べると、半分程度である。
本研究では,佐々木・他(2015b)の手法を再検討し,修正と改善を行った上で,彼らが扱ったデータを再解析した。特に,震源・サイト特性の補正のために行うコーダ規格化の手続きを改善することで,1-2 Hzに加え,2-4, 4-8 Hzの帯域でも散乱係数と内部減衰の値を推定した。また,これまで空間一様を仮定していた散乱係数と内部減衰に対し,地殻と最上部マントルで散乱係数と内部減衰が異なるモデルを検討した。本研究で得られた散乱係数は,過去のMLTW法による散乱係数の値に比べて,解析した全ての帯域において有意に小さい値となった。また,散乱係数は明瞭な周波数依存性を示さず,内部減衰(Q-1)は周波数と負の相関を示した。最上部マントルの散乱・減衰は結果にほとんど影響を与えなかった。これは扱った地震が浅く(深さ9-13 km),マントルを経由する波線がほとんど無かったためである。最上部マントルの散乱係数と内部減衰を推定するためには,より深い地震を使う必要がある。
謝辞:防災科学技術研究所のHi-net の地震記録,および同所が公開しているMatsubara and Obara (2011) の3 次元地震波速度構造モデルのデータを使用しました。
本研究では,佐々木・他(2015b)の手法を再検討し,修正と改善を行った上で,彼らが扱ったデータを再解析した。特に,震源・サイト特性の補正のために行うコーダ規格化の手続きを改善することで,1-2 Hzに加え,2-4, 4-8 Hzの帯域でも散乱係数と内部減衰の値を推定した。また,これまで空間一様を仮定していた散乱係数と内部減衰に対し,地殻と最上部マントルで散乱係数と内部減衰が異なるモデルを検討した。本研究で得られた散乱係数は,過去のMLTW法による散乱係数の値に比べて,解析した全ての帯域において有意に小さい値となった。また,散乱係数は明瞭な周波数依存性を示さず,内部減衰(Q-1)は周波数と負の相関を示した。最上部マントルの散乱・減衰は結果にほとんど影響を与えなかった。これは扱った地震が浅く(深さ9-13 km),マントルを経由する波線がほとんど無かったためである。最上部マントルの散乱係数と内部減衰を推定するためには,より深い地震を使う必要がある。
謝辞:防災科学技術研究所のHi-net の地震記録,および同所が公開しているMatsubara and Obara (2011) の3 次元地震波速度構造モデルのデータを使用しました。