JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS11] [EJ] 地震波伝播:理論と応用

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:西田 究(東京大学地震研究所)、中原 恒(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻固体地球物理学講座)、白石 和也(海洋研究開発機構)、松島 潤(東京大学大学院)

[SSS11-P18] 茨城県及び福島県の県境付近で発生した内陸地殻内地震による茨城県沿岸域における長周期地震動に関する評価・分析(その3)

*藤原 了1桐田 史生2河路 薫1山﨑 敏彦2瓜生 満2武川 大祐2 (1.伊藤忠テクノソリューションズ 原子力・エンジニアリング部、2.日本原子力研究開発機構 建設部)

キーワード:三次元地盤構造モデル、長周期地震動、福島県浜通り地震

[はじめに]2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(Mw9.0:以下、「3.11東北沖地震」という。)に伴う東北日本太平洋側の応力場の変化に誘発される形で、内陸の地殻内において同年4月11日福島県浜通りの地震(M7.0:以下、「浜通り地震」という。)が発生したと考えられている。浜通り地震の発生以降、震源断層と思われる井戸沢断層及び湯ノ岳断層周辺では多数の余震が発生しており、これら浜通り地震及びその余震によって、茨城県北部沿岸域の一部の地震観測点において長周期地震動が観測された。3.11東北沖地震以前、茨城県北部沿岸域では内陸地殻内地震がほとんど発生しておらず、内陸地殻内地震と長周期地震動に関する地震動特性の知見は乏しかった。このため、3.11東北沖地震以降得られた長周期地震動の特徴を踏まえた地震動評価を行うことは、茨城県北部沿岸域における耐震設計を行う上において重要である。以上を踏まえ、本研究では、茨城県北部沿岸域における内陸地殻内地震による長周期地震動評価の高精度化を主な目的とする。
[既往の検討結果]既往研究1~2)において、主に以下の内容を議論してきた。①浜通り地震の震源域より南方に位置する地震観測点の一部において有意な長周期地震動が観察されたが、この長周期地震動に対して地震調査研究推進本部による三次元地盤構造情報に基づく波動伝播シミュレーション解析では再現困難な部分が見られた。②これを踏まえ、茨城県北部沿岸域の地震観測点(防災科学技術研究所の基盤強震観測網KiK-net観測点及び日本原子力研究開発機構の各観測点)で得られた浜通り地震の余震(M6以下の地震で点震源と仮定)の地震観測記録を用いて有限要素法による波動伝播シミュレーション解析を行うことで、各地震観測点で得られた長周期地震動を説明する三次元地盤構造モデルの最適化を行った。③さらに、最適化に用いた地震と同程度の規模及びメカニズムの地震に加え、茨城県沖で発生するプレート間地震を用いて検討することで、三次元地盤構造モデルの精度向上を図った。
[本発表の内容]本発表では主に以下の内容を説明する。①先述した点震源による妥当性検証に加えて、有限断層でモデル化される大規模地震に対する波動伝播シミュレーション解析を実施することで、地震規模の観点から三次元地盤構造モデルの妥当性検証を行う。ここでは、浜通り地震に関する複数の既往震源断層モデルを活用する。②また、茨城県北部沿岸域における地震動の伝播特性を把握するために、三次元地盤構造モデルに対して仮想的な震源を設定し、波動伝播シミュレーション解析を実施する。
[まとめ]有限断層でモデル化される大規模地震に対する三次元地盤構造モデルを用いた長周期地震動評価の有用性を確認した。また、震源と観測点との位置関係による地震動の伝播特性の違いを把握した。具体的には、浜通り地震の様な内陸地殻内地震では基盤の不整形性が主な要因となり、一部の観測点において長周期地震動が励起することを把握した。その一方で、茨城県沖で発生するプレート間地震においては、内陸地殻内地震のような長周期地震動の励起があまり見られないことを把握した。
[引用情報]
1) 藤原了, 桐田史生,河路薫,山﨑敏彦,瓜生満,安田昌宏:茨城県及び福島県の県境付近で発生した内陸地殻内地震による茨城県沿岸域における長周期地震動に関する評価・分析,日本地球惑星科学連合2015年大会, S-SS26-P10, 2015.
2) 藤原了, 桐田史生,河路薫,山﨑敏彦,瓜生満:茨城県及び福島県の県境付近で発生した内陸地殻内地震による茨城県沿岸域における長周期地震動に関する評価・分析(その2),日本地球惑星科学連合2016年大会,S-SS28-P15, 2016.