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[SSS12-01] 中部日本,北部銭洲海嶺上に位置する伊豆諸島北部の後期完新世の隆起:西暦1498年明応地震の波源域の含蓄
キーワード:1498年明応地震、伊豆諸島、隆起貝層、14C年代
西暦1498年8月25日に発生した明応地震(M 8.2-8.4)は,南海トラフ沿いの破壊により引き起こされたと考えられているが,伊豆半島南東の北部銭洲海嶺の地域の破壊によるという考えもある.北部銭洲海嶺沿いの明応地震に起因する地震性隆起を調査することで,この地域の破壊を評価した.具体的には,銭洲海嶺上の新島,式根島,神津島の隆起貝層の標高調査と放射性炭素年代測定を行った.その結果,1950年以降(隆起イベント1),西暦1810-1950年(隆起イベント2),西暦786-1891年(隆起イベント3),西暦600-1165年(隆起イベント4),西暦161–686年(隆起イベント5)の5回の隆起イベントを識別した.隆起イベント4と5は神津島でしか確認されていない.生物種の現在の標高分布に基づき,隆起量を0.2–0.9 m (隆起イベント1), 0.2–0.4 m (隆起イベント 2),0.3–2.6 m (隆起イベント 3),1.6–4.4 m (隆起イベント 4), 8.2 m (隆起イベント5)と推定した.隆起イベント1は,2000年の神津島の近くの三宅島の噴火に伴う,岩脈岩脈の貫入により引き起こされた.隆起イベント2は,近海での地震または岩脈岩脈の貫入が引き起こしたかもしれない.隆起イベント3は,近海の地震,岩脈の貫入,1498年明応地震の可能性がある.隆起イベント4は838年の神津島天上山の噴火,隆起イベント5はそれ以前の火山活動に伴う溶岩ドームの形成によって引き起こされた.これらの知見は1498年の明応地震が式根島と神津島での隆起イベント3を引き起こした可能性を否定しない.しかし,本論のデータと近年の研究から, 1498年の明応地震が南海トラフ沿いで発生し,歴史記録に記された1495年の地震と相模湾での津波が,北部銭洲海嶺南縁の断層の破壊により引き起こされ,本研究地域が隆起した可能性がある.本論は今井啓文の修士論文である.