JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] [EJ] 活断層と古地震

2017年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、杉戸 信彦(法政大学人間環境学部)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、安江 健一(日本原子力研究開発機構)、座長:近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:石山 達也(東京大学地震研究所)

10:45 〜 11:00

[SSS12-13] 布田川-日奈久断層帯のセグメント境界における地震波速度構造

*青柳 恭平1木村 治夫1 (1.電力中央研究所)

キーワード:布田川ー日奈久断層帯、セグメント境界、地震波速度構造

2016年熊本地震では,地震前後の地殻変動や地表地震断層の分布,震源断層面上のすべり分布などから,布田川断層と日奈久断層北部(高野-白旗区間)が活動したと見られている。長大な日奈久断層のうち,今回活動した高野-白旗区間と,活動しなかった日奈久区間以南では,今回の地震以前にも,活動履歴が異なることが示されている(推本,2013)。したがって,そのセグメント境界は,断層の破壊進展を規制する何らかの構造的なバリアとなっている可能性がある。我々は,特にこのセグメント境界における地震波速度構造の特徴を明らかにするために,臨時余震観測データを用いて,トモグラフィ解析を行った。
 余震観測は,2016年7月下旬から9月上旬にかけて,余震域の主要な範囲(阿蘇外輪山~八代付近)をカバーするように,30点の独立型観測点を約5km間隔で設置して行なった。収録された地震波形からP波とS波の初動到達時刻を自動験測し,気象庁一元化震源の決定に用いられている定常観測点の験測値データと併合処理して,tomoDD(Zhang and Thurber, 2003)によりトモグラフィ解析を行った。トモグラフィ解析に用いたのは,10観測点以上で験測値が得られ,暫定的な震源決定により誤差が1km以下になった1710個の地震である。
 結果として,地震発生層にほぼ対応する深さ2.5kmから12.5kmの範囲では,波線密度が十分に高く,4kmグリッドで高解像度の速度分布が得られた。この地域における最大の特徴は,この深さを通じて,東北東-西南西方向の帯状の速度異常が発達していることである。この方向は,大分-熊本構造線や臼杵-八代構造線とほぼ一致しており,この地域における大局的な地質構造を反映したものと考えられる。また,高野-白旗区間と日奈久区間の境界部付近では,やはり同様の方向に顕著な速度急変部が認められ,いずれの深さでも北側が低速度,南側が高速度になっている。この境界は,地表における堆積岩類(御船層群)と変成岩類(肥後変成岩類)の境界とよく対応する。したがって,地質境界における物性変化が,地震の破壊を規制する構造的なバリアになっている可能性が指摘できる。同様の指摘は,重力異常の解析結果からもなされている(Matsumoto et al., 2016)。ただし,1710個の地震のうち80%は,Vpが5.9~6.3km/s,Vsが3.5~3.8km/s,Vp/Vs比が1.62~1.74のレイヤーで発生しており,実際の地震発生層は,御船層群の下位に位置する基盤岩と考えられる。これらの速度範囲を200MPaの高圧下で測定された様々な岩石の速度(Christensen, 1996)と比較すると,地震発生層は花崗岩類である可能性が高い。