JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] [EJ] 活断層と古地震

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、杉戸 信彦(法政大学人間環境学部)、松多 信尚(岡山大学大学院教育学研究科)、安江 健一(日本原子力研究開発機構)

[SSS12-P05] 干渉SAR解析による平成26年(2014年)長野県北部の地震の余効変動

*小俣 雅志1三五 大輔1郡谷 順英1渋谷 典之1 (1.株式会社パスコ)

キーワード:平成26年(2014年)長野県北部の地震、干渉SAR、余効変動、神城断層、地表地震断層、だいち2号

平成26年11月22日に発生した長野県北部の地震(Mj6.7)では,地震前後の干渉SAR解析により白馬村を中心として東西約30km南北約30kmの地域に地殻変動が確認された(国土地理院,2015).地震後に実施された現地調査では,既往の活断層調査による神城断層の一部に沿って地表地震断層が出現した.地表地震断層は白馬塩島付近から白馬村東佐野付近までの9kmで確認されている(Okada et al., 2015).干渉SARの詳細な解析により地表地震断層との関連も検討されている(中埜,2015).本研究では,平成26年11月28日と約7か月後の2015年6月26日の地震後のペアで干渉SAR解析を実施して地震後の余効変動を検討した.山地部では積雪および植生繁茂の影響からか低コヒーレンスとなり干渉が悪いものの,平坦地では干渉に問題はなく変動が読み取れる.解析の結果,地震直後に確認された地表地震断層付近を境にして東側が,北行軌道の衛星に近づく変動が確認された.
塩島付近から大出までの地域における干渉SARによる地殻変動は,地表地震断層付近を比較的明瞭な境界として,東側が西向きもしくは隆起していることが確認される.松川から大出付近の地表地震断層は松川扇状地の逆向き崖に沿って出現しており,既往活断層図の活断層線に沿って出現した(石村ほか,2015).その後のトレンチ調査によってこの活断層線の位置で2014年の地震による変形に先行する複数回の地震イベントが確認されている(遠田ほか,2016).
白馬駅東方付近では,干渉SARによる地殻変動の境界は姫川付近に連続している.この地域の地表地震断層は姫川より西側で体育館(ウイング21)近くに連続し,変位量は北側の大出付近と比較して小さい.余効変動の境界はこの地表地震断層付近とは一致していない.
深空東方付近では,姫川右岸の山地部分に西向きもしくは隆起の変動が見られるものの,その変動量は一定せず,干渉色がまだらに変化する.おおよそ姫川沿いに変動境界があるものの,その境界はあまり明瞭には連続しない.
平川と姫川の合流部付近から南,飯田付近にかけての変動量が最も大きく姫川右岸の山地が3~4cm西向きに移動,もしくは隆起している.変動境界はおおよそ姫川沿いに分布し,飯田東方の水田の東縁沿いに東側へ曲がる.これより南方は地殻変動が不明瞭となり,堀之内付近より南では確認できなくなる.
干渉SAR解析により平成24年(2016年)長野県北部の地震の地震後,約7ヶ月間での余効変動が確認された.余効変動は地震後に確認された地表地震断層に沿う位置より東側が西向きに移動もしくは隆起する変動として確認された.明らかな地表地震断層が確認された地域では地殻変動の境界が明瞭に確認できる.地表地震断層の変位量が小さく,連続が不明瞭な地点では地殻変動の境界も不明瞭,もしくは明瞭な地殻変動が生じていないことが明らかとなった.
本研究に用いたALOS-2データは,ALOS-2 PIプロジェクト(PI No.1410)の下,JAXAよりALOS-2データ提供を受けたものである.首都大学東京の石村大輔博士には,長野県北部の地震後の余効変動が生じている可能性についてご教示いただき,本研究解析のきっかけを作っていただきました.ここに感謝いたします.
【引用文献】
石村ほか(2015)活断層研究,43,95-108.
国土地理院(2015)http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/h26-nagano-earthquakeindex.
中埜ほか(2015)活断層研究,43,69-82.
Okada et al.(2015) Seismological Research Letters, 86, 5,1-14.
遠田ほか(2016)地球惑星科学連合大会,SSS31-16.