[SSS12-P10] 武蔵野台地北東縁部の変動地形
武蔵野台地周辺には綾瀬川断層や深谷断層など、第四紀後期に活動を繰り返してきた断層が分布する(活断層研究会,1991)。また、このほかにも関東平野を含む南関東地域の活構造については、上総層群・下総層群および中期更新世以降の海成・河成段丘面の分布・編年に基づいた数多くの研究がある(例えば貝塚, 1987; 廣内、1999; 杉山ほか、1997)。武蔵野台地北東部では従来から北東方向への傾動が指摘されてきた (貝塚、1957)が、綾瀬川断層・深谷断層以外に顕著な活断層は指摘されていない。一方、Ishiyama et al. (2013) は、大大特・北関東測線などの近年関東平野で行われてきた大深度地殻構造探査(佐藤ほか、2010)と周辺地域の新生代層序との対比の結果に基づき、南関東の平野域に分布する伏在断層の深部形状を推定した。その結果、武蔵野台地北東縁部に西傾斜の伏在逆断層が複数条分布することがわかった。本研究では、これらの断層を含めた当地域の活構造の分布を明らかにするために、中期〜後期更新世に形成された段丘地形の分布・編年・構造を再検討した。その結果、川越から富士見にかけての中位段丘面群や、坂戸から狭山にかけての高位〜低位段丘面群に、東向き撓曲崖が断続的に分布することがわかった。これらの一部は、深部構造探査で認められた逆断層の地表延長に位置し、また下総層群や後期更新世の地層の分布高度を食い違わせるものもあることから、伏在逆断層の最近の活動を示す地形的証拠である可能性がある。また、北関東測線より北には、所沢台・武蔵野面・立川面を変位させる撓曲崖地形が岩殿丘陵の東縁部まで断続的に分布しており、これらは同様に伏在断層の第四紀後期の変位を示す可能性がある。概してこれらの地形の上下落差は中位段丘面で数mであり、地形面の変位量からは、その多くはいわゆるC級活断層と推定される。これらの伏在断層の性格を明らかにするためは、さらに多くの地下地質資料を取得し、変位地形についてより詳細な検討を進めることが重要である。