JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] [JJ] 地震活動

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、座長:大見 士朗(京都大学防災研究所地震防災研究部門)、座長:野村 俊一(東京工業大学情報理工学研究科)

11:00 〜 11:15

[SSS13-08] 2016年10月21日鳥取県中部の地震に伴う地震活動
~Matched Filter Methodによる同時進行的解析~

*大見 士朗1 (1.京都大学防災研究所地震防災研究部門)

キーワード:鳥取県中部の地震、マッチドフィルター法、半自動震源決定処理

§はじめに:2016年10月21日14時07分に鳥取県中部において気象庁マグニチュード6.6の地震が発生し、その後活発な地震活動がみられた。本報告では、10月21日から11月30日までの期間の地震活動の推移をMatched Filter Method (MFM)を用いて解析した結果を報告する。本解析の目標は、本手法により地震活動の推移を現象とほぼ同時進行にかつ効率的に把握できるかどうかを試みることである。解析には、大見(2015)による、MFMによる地震検出と震源決定を組み合わせた手法を用いた。

§対象地域とデータ解析の概要:Fig.1に今回報告した対象地域を示す。使用したデータは震源域周辺の、防災科研、気象庁、京都大学により運用されている微小地震観測点11点のものである。MFMでのイベント検出は、対象とする地震とテンプレート地震(以下、TP地震)の距離が大きい場合や、両者のマグニチュードの差が大きい場合には検出効率が低くなることがある。そのため、ここでは、従来からのSTA/LTA方式でトリガ判定を行う自動処理結果からS/Nのよいものを選び出してTP地震の候補とし、既存TP地震との震央距離が2.5km以上、マグニチュードの差が1.0以上の地震が発生した場合にはそれを新たなTP地震として使用することとした。新たなTP地震の選定のたびに既存のTP候補地震群と比較し、TP候補地震群の更新を行ったうえで新規TP地震の選定を継続した。この条件で選定されたTP地震は10月21日から11月6日までの期間で37個、11月30日までの全期間で40個であった。新規TP地震が選定された場合には、そのTP地震で期間中の全データのスキャンを行い、新規TP地震によるイベントの検出と全イベントリストの再構成を行った。Fig.1にはこれらのTP地震の分布も示す。

§解析結果と考察:Fig.2にMFM解析の結果による10月21日から11月6日までの震源分布およびその時空間分布を示す。また、比較のため、気象庁カタログ(以下、JMAと記す)による同時期の震源分布等をFig.3に示す。Fig.3には、気象庁震源リストから、フラグK, k, Aが付されているものを選択してプロットした。使用した気象庁カタログは、2016年11月初旬現在の速報値である。MFMによる解析(Fig.2)では、10月21日から11月6日までの16日間に、この期間内に発生した37個のTP地震によって約7000個の地震が検出・震源決定された。それによれば震源域には主にNNW-SSE方向に分布するクラスタが本震を含むクラスタを含めて複数個認められる。これに対しFig.3(JMA)では、本震を含むクラスタを除き、Fig.2(MFM)で見られたNNW-SSE方向に分布する複数のクラスタは明瞭ではない。また、本震を含むクラスタの南西側にも震源が分布し、これらはFig.2(MFM)ではNNW-SSE走向のクラスタ構造を呈するがFig.3(JMA)では明瞭ではない。また、Fig.2(MFM)で見られる最も北東側のクラスタに相当するものはFig.3(JMA)でははっきりとは認識できない。逆に、Fig.3(JMA)では本震を含むクラスタの南東端からそれにほぼ直交して延びるクラスタが認められるがFig.2(MFM)ではこれは分離したクラスタとなっており明瞭ではない。MFMの結果は自動処理結果であることから、MFMで認識されてもJMAで認識されていない震源クラスタは解析上の虚像である可能性があり、今後個別の震源データを比較・精査することは必須である。しかしながら、今回の解析では約40個というひじょうに少数のTP地震の選定によって得られたMFM解析の結果の特徴と、精査を経たJMAの解析結果の特徴に共通点も多く見られることから、群発地震の進行中のその概要を同時進行的に把握するための手段として本手法は有用であると考えられる。