JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] [JJ] 地震活動

2017年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、座長:大見 士朗(京都大学防災研究所地震防災研究部門)、座長:野村 俊一(東京工業大学情報理工学研究科)

11:15 〜 11:30

[SSS13-09] 自動処理を活用した一元化震源から推定された前震・余震活動の特徴抽出

*溜渕 功史1八木 勇治2 (1.気象研究所、2.筑波大学)

キーワード:地震クラスタリング、b値、自動処理、前震

地震活動について研究する上で,GR則に従うMの下限(Mc: completeness magnitude)が下がることは重要な意味を持つ.十分な地震数があれば,ETAS解析による地震活動解析やバックグラウンドの地震活動変化の検出,b値解析による応力状態の推定が高い時空間分解能で行うことが可能になる.また,一般に活動が低調な前震活動の特徴を理解する上でも,より小さな地震を検出することは重要である.2016年4月に新しい自動処理手法(溜渕・他, 2016) によって改善された一元化震源が開始し,従来のカタログに比べて約2倍の震源決定数となった.ただし,熊本地震では余震の数が膨大で,目視による確認作業をリアルタイムに行うことが困難なため,現時点で必ずしも検知された全ての地震がカタログ化されているわけではない.そこで,自動処理がリアルタイムに規模の小さい地震も活用できることを利用して,一元化震源と自動震源を併用したマージカタログデータを作成した.本研究では,この地震数が多いマージカタログから,従来十分な検討が行われていなかった微小地震活動を含めた前震・余震活動の特徴抽出を行った.このようなビッグデータから地震活動を解析するためには自動的なクラスタリング手法が有効であり,すでに多数の手法が提案されている.本研究では,地震クラスタの同定にZaliapin and Ben-Zion (2013) による最近傍法による解析を行った.また,解析には,この手法を多数の地震数にも適用できる様に工夫したプログラム (Kasahara, 2016) を使用した.この手法は,震央距離,時間差,マグニチュードを使用して震源間の距離を定義し,客観的かつ自動的に地震活動をクラスタリングするものである.得られた震源間の距離のヒストグラムはバイモーダルになり,既往研究と同等の閾値で自動的に地震活動をクラスタリングできることが確認できた.次に,このクラスタ情報を用いて,前震・本震・余震を抽出し,b値などの統計量の解析を行った.特に前震が50イベント以上存在する5系列に対してb値を算出し,前震と余震のb値を比較すると,熊本地震と10月の鳥取県中部の地震活動の2系列では,有意に前震のb値が低いことが明らかになった.この低いb値は,前震活動時の応力の高まりに対応する可能性がある.一方で,前震と余震のb値の変化がほぼないクラスタも多数存在することが分かった.今後,自動処理による震源カタログの充実により,前震や余震活動の特徴がより明確になることが期待される.