[SSS13-P02] 2011年東北地方太平洋沖地震震源域における地震後応力場の時間変化
2011年東北地方太平洋沖地震(東北沖地震)時には,その震源域周辺で応力場が大きく変化し,震源では蓄積されていたせん断応力がほとんどすべて解放されたことが,主応力軸とプレート境界がなす角度の変化を基に推定されている(Hardebeck, 2012; Hasegawa et al. 2011).更に,Hardebeck (2012) は,地震発生後の 0.1 年間に主応力軸が地震前の方向に戻ったことを示し,地震時にほとんどすべてのせん断応力が解放されたために,地震後短期間のプレート間固着によるわずかなひずみの再蓄積によってでも,主軸方向が回復されうると解釈している.
本研究では,Hardebeck (2012)と同様に,青森県沖から千葉県沖までの日本海溝陸側斜面域を対象として,東北沖地震後の応力軸の方向の時間変化を再解析することにより,Hardebeck (2012) が行った解析の追試を行った.その際,解析領域の中で応力状態が空間的に一様でない可能性も考慮して,全領域を一括した解析の他,東北沖地震の地震時すべり(Yagi and Fukahata, 2011)が大きかった範囲とその外側範囲とに分けた解析も行った.
まず,全領域を一括して,発生した地震の発震機構解に応力テンソル・インバージョン法(Hardebeck and Michael, 2006) を適用した場合には,Hardebeck (2012) が示したのと同様な東北沖地震後の応力軸の回転する結果が得られた.しかしながら,解析範囲を地震時すべりが大きかった範囲とその外側範囲の2領域に分けてみると,それぞれの領域で東北沖地震の発生後に卓越する発震機構解は大きく異なる傾向がみえる.地震時応力変化が大きかったと期待される地震時すべりが大きかった領域内では,正断層型地震の活動が極めて活発であるのに対して,その周辺領域では逆断層型地震が多く発生しており,応力状態に空間的な違いがあることが示唆される.そこで,それぞれの領域を対象として応力解析をした結果,地震時すべりが大きかった地域における応力軸は,地震時に大きく回転した後,約5年間で緩やかに地震前の方向に向かって変化するが, Hardebeck (2012) が主張するように東北沖地震前の状態にまで戻ってはいない.一方で,周辺地域では,地震時の応力軸の回転は小さく,地震後の変化も非常に小さい.このように東北沖地震のすべり範囲を考慮した再解析を行った結果,Hardebeck (2012)が得た結果には,応力場の空間不均質を無視したことに起因する見かけの時間変化があらわれてしまっている可能性がある.
本研究では,Hardebeck (2012)と同様に,青森県沖から千葉県沖までの日本海溝陸側斜面域を対象として,東北沖地震後の応力軸の方向の時間変化を再解析することにより,Hardebeck (2012) が行った解析の追試を行った.その際,解析領域の中で応力状態が空間的に一様でない可能性も考慮して,全領域を一括した解析の他,東北沖地震の地震時すべり(Yagi and Fukahata, 2011)が大きかった範囲とその外側範囲とに分けた解析も行った.
まず,全領域を一括して,発生した地震の発震機構解に応力テンソル・インバージョン法(Hardebeck and Michael, 2006) を適用した場合には,Hardebeck (2012) が示したのと同様な東北沖地震後の応力軸の回転する結果が得られた.しかしながら,解析範囲を地震時すべりが大きかった範囲とその外側範囲の2領域に分けてみると,それぞれの領域で東北沖地震の発生後に卓越する発震機構解は大きく異なる傾向がみえる.地震時応力変化が大きかったと期待される地震時すべりが大きかった領域内では,正断層型地震の活動が極めて活発であるのに対して,その周辺領域では逆断層型地震が多く発生しており,応力状態に空間的な違いがあることが示唆される.そこで,それぞれの領域を対象として応力解析をした結果,地震時すべりが大きかった地域における応力軸は,地震時に大きく回転した後,約5年間で緩やかに地震前の方向に向かって変化するが, Hardebeck (2012) が主張するように東北沖地震前の状態にまで戻ってはいない.一方で,周辺地域では,地震時の応力軸の回転は小さく,地震後の変化も非常に小さい.このように東北沖地震のすべり範囲を考慮した再解析を行った結果,Hardebeck (2012)が得た結果には,応力場の空間不均質を無視したことに起因する見かけの時間変化があらわれてしまっている可能性がある.