JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] [JJ] 地震活動

2017年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)

[SSS13-P07] 米沢-会津地域の誘発地震活動-メカニズム解の時空間変化-

*鈴木 真奈美1星 泰平1長谷見 晶子1 (1.山形大学)

キーワード:誘発地震、メカニズム解、棚倉構造線

2011年東北地方太平洋沖地震の7日後から山形県米沢から福島県会津にかけての地域で誘発地震活動が始まった。活動度は低くなりつつ、現在も継続している。活動域の下には棚倉構造線の北方延長が通過していると推定されるが、地表は新生代の火成岩に覆われていて構造線の分布形態は不明である。本研究では、メカニズム解の節面から断層の形状(走向と傾斜)の推定を試みた。卓越する断層の形状を調べるには規模が大きい地震を使うのが望ましいが、今回の活動はマグニチュードが4を超えるような地震の発生数は少ないため、マグニチュードが3以上の地震を対象とした。使用したデータは活動開始時から2015年10月までに起きた地震の波形で、Hi-netの観測点で記録されたものである。メカニズム解はP波初動の押し引きから求めた。その際、押し引き方向が明瞭な波形のみを用いた。20以上の押し引きデータがあり、決定精度がよいメカニズム解が100個得られた。

断層の型は逆断層または横ずれ成分を含む逆断層がほとんどであった。2つの節面のうち、走向が震源の並び方向に近い、周辺の地震の節面と共通である、逆断層の場合は傾斜角が小さい、という条件に合うものを断層面と考えた。そのようにして選んだ断層面の走向、傾斜には次のような特徴がみられた。1)走向は活動域の中央部(大峠カルデラの中央部から南西縁付近)で北西-南東方向、その他の場所では南-北~北北東-南南西方向、2)震源はいくつかのクラスターに分かれているが、活動域の中央部から南端ではクラスターごとに卓越する走向、傾斜方向がある。2)北端付近のクラスターでは走向はそろっているが西傾斜、東傾斜の面が混在している。以上の特徴から、大峠カルデラの下には棚倉構造線の方向に近い走向を持つ断層が分布するのに対し、ほかの領域には東北地方に特徴的な走向(南北方向)を持つ断層が卓越すると考えられる。

いくつかの研究により、この地震活動は流体の流入、あるいは流体圧の増加によって誘発されたと指摘されている。流体の状態に変化があると、メカニズム解も変化する可能性がある。そこで、メカニズム解の時間変化も調べた。対象としたのは活動が継続している37.76-37.78°N、139.97-140.02°Eの範囲で、活動開始時から2015年10月までに起きたマグニチュード2以上の地震を使った。メカニズム解を一意的に決められない地震が多かったため、押し引き分布の変化から応力場の変化を推定した。対象地域を4つの領域に分け、それぞれの領域の押し引きデータを1ヶ月ごとに震源球にまとめて表示し、押し引き分布の時間的な変化を調べた。その結果、西側の領域では逆断層に合う押し引き分布が多く、押し引きパターンの変化が少なかった。東側の領域では北西-南東方向の張力が働く横ずれ断層のパターンが多いが逆断層のパターンの時期もあるため、この領域では流体圧など地下の状態が変化している可能性が考えられる。

気象庁の一元化震源および気象庁、東北大学、防災科学技術研究所Hi-Netの波形データを使用した。メカニズム解は東北大学海野徳仁博士のプログラムを使用して計算した。記して感謝申し上げます。