JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] [JJ] 地震予知・予測

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 101 (国際会議場 1F)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院理工学研究部)、座長:加藤 護(京都大学大学院人間・環境学研究科)、座長:楠城 一嘉(静岡県立大学)

14:15 〜 14:30

[SSS14-03] イタリアの地震と地震空白域

*石川 有三1 (1.The National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)

キーワード:地震予知、地震空白域、イタリア

地震予知に結びつく地震空白域の概念を最初に提案したのは大森房吉で、イタリアの地震帯の中に未破壊域が二カ所あることを指摘した(大森、1909)。これは8万2千人の犠牲を出したメッシナ地震のあとに書かれた。その後、指摘した2カ所の内の北側の空白域で1915年アベツアーノ地震M7.0が起きた。この地震では、残念ながら3万人を超える死者が出ている。ただ、大森(1909)は世界で始めて被害をもたらすような大地震の発生場所の予測に成功したと言える。しかし、未破壊域として指摘していたもう一カ所は、今に至るもまだ大地震は起きていない。指摘からすでに100年以上も経過しており、こちらは予測の失敗と考えるべきであろう。
近年、アペニン山脈に沿ったイタリア中部で中規模地震の発生が続いている。1984年4月29日にこの正断層帯の北部でM6.1の地震が起き、同じ年の5月7日にM6.0の地震がやや南部で起きた。その後、これらの震源域の間で1997年M6.4、2009年M6.3、2016年8月24日M6.2、同10月26日にM5.9、2017年1月18日M5.9の地震が立て続きに起きて、一部は大きな被害を引き起こしている。ここでは、これらの震源域の分布から、この地域の地震空白域を推定する。
ここではイタリア国立地球物理・火山研究所(INGV)のItalian Seismic Instrumental and parametric Data-base(ISIDe)、米国地質調査所の震源データと宇津の世界被害地震カタログを主に用いた。震源域の推定は、本震後一ヶ月間のマグニチュード2.5以上の余震分布で求めた。
この条件で地図に余震域を描いていくと1997年M6.4の震源域から2009年M6.3の震源域までの地域はほぼ隙間無く余震域で埋め尽くされる。従って、この地帯では余震は起きることはあるが、大きな地震は起きないのではないかと推定される。しかし、1984年4月M6.1と1997年M6.4の間にはややギャップが見られる。ただ、INVGの地震観測網が1984年当時それほど稠密ではなかったようで、1984年4月M6.1の余震数はそれほど多くはない。そのため、両者の間のギャップが地震空白域なのでどうかは断定できないが、注意を要する場所である。
次に南の2009年M6.3と1984年5月M6.0の間に大きなギャップが見られる。このギャップの中では、1915年にアベツアーノ地震M7.0が起きている。歴史地震を含めた過去の地震活動から考えられるこの地域の地震の繰り返し発生間隔は数100年と考えられる。この大きなギャップを1915年アベツアーノ地震の震源域がどれだけ埋めているかが地震空白域が存在するのかどうかにかかっている。さらに南の1984年M6.0地震と1980年M6.9イルピニア地震の間にも地震空白域が存在する可能性もある。