JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] [JJ] 地震予知・予測

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 101 (国際会議場 1F)

コンビーナ:馬場 俊孝(徳島大学大学院理工学研究部)、座長:加藤 護(京都大学大学院人間・環境学研究科)、座長:楠城 一嘉(静岡県立大学)

15:00 〜 15:15

[SSS14-06] 地震前兆現象の統計的検定に関するいくつかの問題

*加藤 護1 (1.京都大学大学院人間・環境学研究科)

キーワード:地震前兆現象

過去に提案された地震の前兆現象の中には地震とその現象とが関連する物理機構が定量的に解明されていない現象が含まれる。機構が明らかでない場合でも関連性が十分高ければその現象の観測結果を地震の予知・予測に用いることはできると考えるとこの種の研究に意義はある。関連性は統計的に検討することとなる。本発表ではこの統計的検証手法について考察する。過去に報告された地球電磁気学的な地震前兆現象候補の研究事例を取り上げ、その中に妥当とは言いにくい統計的検定手法が使われた例があることを紹介する。なお本発表で取り上げる統計的検証手法の問題は地球電磁気学的以外の現象を扱うときにも適用されるであろう。

閾値の設定:
物理機構が定量的に解明されていない現象では地震に対する先行時間や信号の大きさを理論的に知ることができないため、地震との関係では閾値が探索的に考察される。閾値の設定には過去のデータの検証が必要となるが、この際結果を知ってから仮説を設定する誤謬(data snooping)を避ける必要がある(例えばLove and Thomas [2013])。具体的には仮説の設定とその検証において同じデータを繰り返し用いてはいけない。独立なデータで仮説の検証が行われていないならば得られた結論は保留するのがよいであろう。

多重検定に伴う補正:
統計的検定で用いる有意水準は帰無仮説が正しいにも関わらず仮説検定で棄却してしまう確率(第一種の誤りを犯す確率)である。同じ水準を設定しても同時に多くの統計的検定を行うと第一種の誤りを犯す可能性は大きくなる。これは試行回数を増やすとそれに伴って偶然有意水準より小さなp値を得る回数の期待値が大きくなるためである。Love and Thomas(2013)による太陽活動と地震との関係の検討では小さなp値が得られる閾値の組み合わせがあるが、複数の検定を同時に行う際の補正を行うと統計的に有意ではないと判断できる。
過去の事例には多重検定を行ったことが陽に示されていないものもある。閾値の設定の理論的根拠が明示されていない場合、統計的に有意になる閾値を探索的に探した可能性を念頭に置き、その結論の採用を保留することが賢明であろう。