13:45 〜 14:00
[SSS15-01] 2011年と2016年に茨城県北部で発生したM6クラスの地震の震源過程
キーワード:震源過程、内陸地殻内地震、強震動、繰り返し地震、茨城県北部地震
【はじめに】
2016年12月28日21:38に茨城県北部でM6.3の地震が発生した.この地震の震源域では,2011年東北地方太平洋沖地震の直後から,それ以前には殆ど発生していなかった正断層型の地震を主とする地震活動が活発化し,2011年3月19日にはM6.1の地震が発生している.合成開口レーダによる解析では2016年と2011年の地震の地殻変動はほぼ同じ領域で確認されており(国土地理院,2017),それらの観測によれば, 5.7年程度の間隔で同規模の地震が繰り返し発生したことになる.
また,震源域に位置するKiK-net観測点(IBRH13, 高萩)では両地震とも1G程度の強震動が観測されており,断層近傍の地震動レベルを考えるためにも貴重な記録である.そこで2016年の地震と合わせて2011年の地震の震源過程解析を行い,これらについての考察を行った.
【解析条件】
震源インバージョン解析には震源域を取り囲むK-NET, KiK-netの観測記録を使用した.2016年と2011年の地震の解析で同じ観測点を使用することを基本とし,震央距離が50km程度以内で観測点分布や地盤条件を考慮して16観測点を選定した.震源インバージョン解析に先立ち,震源域で発生した小規模地震(2012年2月19日, M5.2)の観測記録で観測点毎に水平成層構造モデルのチューニングを行った.震源インバージョン解析には,観測された加速度波形に0.05~0.8Hzをフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけた後に積分した速度波形を用いた.
断層面を設定する際の基準となる震源諸元は,JMA一元化検測値をデータとしてDouble Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により再決定した値を用いた.断層面はF-netによるメカニズム解を初期値として,余震分布との比較や観測波形の再現性を確認しながら設定した.インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al.(1996),引間(2012))により行い,その際の小断層サイズは1km×1kmとした.
【解析結果:2016年の地震】
解析の際の断層面は余震発生域を覆うようにやや広めに設定し,最終的には,走向:164°,傾斜:50°,長さ×幅は17km×12kmとした.震源深さは10.3kmである.インバージョン解析により,地震モーメントはM0=9.7e17 Nm(Mw 5.9),最大すべり量は0.7m程度の正断層成分を主とする結果が得られた.破壊は震源から主に北方向の浅部に進展し,破壊開始点から6~7km程度離れたところで最大のすべりを生じたと推定された.
【解析結果:2011年の地震】
断層面は余震分布を参考に破壊開始点から主に南に向かって設定し,走向:141°,傾斜:40°,長さ×幅は15km×11kmとした.震源深さは5.9kmである.インバージョン解析の結果,地震モーメントはM0=7.0e17 Nm(Mw 5.8),最大すべり量が0.6m程度の正断層成分を主とするすべり分布が推定された.震源付近に最大すべりが推定された,大すべり域は北方向に数km程度の範囲に広がっている.震源よりも南側のすべり量はあまり大きく無い結果であった.
【考察】
2016年の地震の震央位置は2011年の地震より7kmほど南に位置している.しかし,インバージョン結果では2016年の地震は北に向かって進展したことが示され,一方で2011年の地震は震源付近で大きなすべりを生じたと推定されるため,2つの地震の大すべり域はかなり近接している結果となった.但し,断層面の走向・傾斜は異なり,設定上は両者の断層面は同一では無い.さらに,両者のすべり分布の比較からは,最大すべりを生じた位置は近接しているものの,2016年と2011年の大すべり域は平面的にも殆ど重ならないことが確認された.以上のことから,両者の主要なすべり域は異なっていたと推定される.
これらの地震で大振幅の地震動が観測されたIBRH13(高萩)観測点は,両者の大すべり域のごく近傍に位置している.特に,2011年の地震ではIBRH13の直下で相対的に大きなすべり量が推定された.IBRH13の地表地震計では2011年の地震で1084gal,2016年の地震で887galの最大加速度(3成分合成,NIED強震観測網のHPより)が観測されているが,観測点直下でのすべりが大きかった2011年の地震でより大きな強震動を生じたものと考えられる.
<謝辞:解析には,防災科学技術研究所K-NET, KiK-netの観測記録,F-netメカニズム解,JMA一元化検測値等を使用させて頂きました.>
2016年12月28日21:38に茨城県北部でM6.3の地震が発生した.この地震の震源域では,2011年東北地方太平洋沖地震の直後から,それ以前には殆ど発生していなかった正断層型の地震を主とする地震活動が活発化し,2011年3月19日にはM6.1の地震が発生している.合成開口レーダによる解析では2016年と2011年の地震の地殻変動はほぼ同じ領域で確認されており(国土地理院,2017),それらの観測によれば, 5.7年程度の間隔で同規模の地震が繰り返し発生したことになる.
また,震源域に位置するKiK-net観測点(IBRH13, 高萩)では両地震とも1G程度の強震動が観測されており,断層近傍の地震動レベルを考えるためにも貴重な記録である.そこで2016年の地震と合わせて2011年の地震の震源過程解析を行い,これらについての考察を行った.
【解析条件】
震源インバージョン解析には震源域を取り囲むK-NET, KiK-netの観測記録を使用した.2016年と2011年の地震の解析で同じ観測点を使用することを基本とし,震央距離が50km程度以内で観測点分布や地盤条件を考慮して16観測点を選定した.震源インバージョン解析に先立ち,震源域で発生した小規模地震(2012年2月19日, M5.2)の観測記録で観測点毎に水平成層構造モデルのチューニングを行った.震源インバージョン解析には,観測された加速度波形に0.05~0.8Hzをフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけた後に積分した速度波形を用いた.
断層面を設定する際の基準となる震源諸元は,JMA一元化検測値をデータとしてDouble Difference法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により再決定した値を用いた.断層面はF-netによるメカニズム解を初期値として,余震分布との比較や観測波形の再現性を確認しながら設定した.インバージョンはマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al.(1996),引間(2012))により行い,その際の小断層サイズは1km×1kmとした.
【解析結果:2016年の地震】
解析の際の断層面は余震発生域を覆うようにやや広めに設定し,最終的には,走向:164°,傾斜:50°,長さ×幅は17km×12kmとした.震源深さは10.3kmである.インバージョン解析により,地震モーメントはM0=9.7e17 Nm(Mw 5.9),最大すべり量は0.7m程度の正断層成分を主とする結果が得られた.破壊は震源から主に北方向の浅部に進展し,破壊開始点から6~7km程度離れたところで最大のすべりを生じたと推定された.
【解析結果:2011年の地震】
断層面は余震分布を参考に破壊開始点から主に南に向かって設定し,走向:141°,傾斜:40°,長さ×幅は15km×11kmとした.震源深さは5.9kmである.インバージョン解析の結果,地震モーメントはM0=7.0e17 Nm(Mw 5.8),最大すべり量が0.6m程度の正断層成分を主とするすべり分布が推定された.震源付近に最大すべりが推定された,大すべり域は北方向に数km程度の範囲に広がっている.震源よりも南側のすべり量はあまり大きく無い結果であった.
【考察】
2016年の地震の震央位置は2011年の地震より7kmほど南に位置している.しかし,インバージョン結果では2016年の地震は北に向かって進展したことが示され,一方で2011年の地震は震源付近で大きなすべりを生じたと推定されるため,2つの地震の大すべり域はかなり近接している結果となった.但し,断層面の走向・傾斜は異なり,設定上は両者の断層面は同一では無い.さらに,両者のすべり分布の比較からは,最大すべりを生じた位置は近接しているものの,2016年と2011年の大すべり域は平面的にも殆ど重ならないことが確認された.以上のことから,両者の主要なすべり域は異なっていたと推定される.
これらの地震で大振幅の地震動が観測されたIBRH13(高萩)観測点は,両者の大すべり域のごく近傍に位置している.特に,2011年の地震ではIBRH13の直下で相対的に大きなすべり量が推定された.IBRH13の地表地震計では2011年の地震で1084gal,2016年の地震で887galの最大加速度(3成分合成,NIED強震観測網のHPより)が観測されているが,観測点直下でのすべりが大きかった2011年の地震でより大きな強震動を生じたものと考えられる.
<謝辞:解析には,防災科学技術研究所K-NET, KiK-netの観測記録,F-netメカニズム解,JMA一元化検測値等を使用させて頂きました.>