JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] [JJ] 強震動・地震災害

2017年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:津野 靖士(鉄道総合技術研究所)、座長:引間 和人(東京電力ホールディングス株式会社)、座長:引田 智樹(鹿島建設株式会社)

14:00 〜 14:15

[SSS15-02] アレイ解析による2016年4月16日大分誘発地震の震源の推定

土井原 健太1、*小松 正直2竹中 博士2 (1.岡山大学理学部地球科学科、2.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:大分誘発地震、センブランス法、アレイ解析

2016年4月16日1時25分に熊本県を震源とするMJMA7.3の熊本地震本震が発生した.その約32秒後に大分県由布を震源とするMJMA5.7の大分誘発地震が発生し,両地震により大分県内で最大震度6弱を観測した.観測波形を見ると,本震のフェーズの後に誘発地震による短周期のフェーズが見られ,これは震源近傍の観測点で顕著になる.この地震については,気象庁が主にS波の到達時刻を読み取り,震源決定を行っている.本震によるフェーズがノイズとなり,誘発地震のP波の読み取りが困難になっているため,P波の到達時の読み取りは震源近傍の4観測点のみである.他に大分誘発地震の震源を決定した例として,Yoshida (2016),Miyazawa (2016)があり,これらも震源近傍の観測点におけるP波およびS波を読み取っている.また,Nakamura and Aoi (2017)は加速度エンベロープ波形を用いたバックプロジェクション法により震源を推定している.本研究では,アレイ解析の一種であるセンブランス法を用いて,大分県内の強震/震度観測点を用いた3点アレイを複数組設定して誘発地震のS相をセンブランス解析し,震源からの波の到来方位と水平スローネスを推定した.推定された到来方位と水平スローネスをデータとし,グリッドサーチにより震央及び震源深さを決定した.さらに,誘発地震のS相の変位スペクトルについて,その水平レベルを用いてモーメントマグニチュードの推定も行った.本研究で使用した波形データは防災科研の強震観測網(K-NET,KiK-net),広帯域地震観測網(F-net),気象庁と大分県の震度観測点,計17点である.そのうち,15観測点の記録をアレイ解析に使用し,震源近傍の2観測点の記録をマグニチュードの推定に使用した.震源から見たアレイの方位分布がほぼ均等になるように5組のアレイを設定した.それぞれのアレイにセンブランス法を適用し,各観測点の波形に見られる誘発地震のS相1秒間を解析した.推定された波の到来方位と水平スローネスを用いてグリッドサーチを行った結果,震源は33.277˚N,131.420˚E,深さ10.7 kmと決定され,これは気象庁によって決定された震源より東方向約2 kmの位置にある.震源近傍の5観測点におけるPGAおよびPGVを求めると,震源に一番近い気象庁震度観測点である別府市鶴見のPGAが一番高い.2番目にPGAが高い観測点は震源の西にあるK-NETのOIT009であり,この観測点においてPGVが一番高い.これはOIT009において由布院盆地による地盤増幅の影響を強く受けているためであると考えられる.一方,別府湾に近い別府市鶴見は由布院盆地ほど地盤増幅の影響は大きくない.これは震源が気象庁決定の位置よりも東寄りにあることを示唆しており,本研究の推定結果の妥当性を示す.震源に近い上述の2観測点の変位スペクトルを用いてマグニチュードの推定を行った.その際,最大余震(MJMA5.4)の余震のスペクトルを用いたサイト補正を行った.その結果,マグニチュードはMw5.5と求まった.この値は気象庁やNakamura and Aoi (2017)による値に対応する.誘発地震発生後24時間以内の余震分布を見ると,本研究で推定した震源の周辺では余震が起きていないことが確認された.この領域は,誘発地震のアスペリティに当たると考えられる.
謝辞:本研究は文部科学省委託事業「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」の一部として実施しました.また,防災科研,気象庁および大分県の強震波形記録を使用しました.