JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] [JJ] 強震動・地震災害

2017年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (国際会議場 2F)

コンビーナ:津野 靖士(鉄道総合技術研究所)、座長:引間 和人(東京電力ホールディングス株式会社)、座長:引田 智樹(鹿島建設株式会社)

14:30 〜 14:45

[SSS15-04] 宮城県沖のスラブ内地震とプレート境界地震の震源特性,距離減衰特性,サイト特性

*筧 楽麿1 (1.神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻)

キーワード:高周波レベル、スラブ内地震、プレート境界地震、震源深さ、距離減衰、サイト特性

笠谷・筧(2014)は宮城県沖のスラブ内地震とプレート境界地震に対し,防災科学技術研究所のK-NET記録を用い,スペクトルインバージョンを行い,同程度の深さを持つスラブ内地震とプレート境界地震の高周波レベルは同程度で,スラブ内,プレート境界を問わず震源深さが深いほど高周波レベルが高いという結果を得た。それ以前の研究では,スラブ内地震の方がプレート境界地震よりも高周波地震波をよく放出するという見解が定説であったのに対し,高周波地震波の振幅レベルは,プレート境界地震/スラブ内地震といったテクトニック環境ではなく,単純に震源が深いほど高いという別の見解も提出されていた(例えば加藤・他,1999)。筧・笠谷(2014)の結果は,後者の見解を支持するものである。

筧(2016)は,笠谷・筧(2014)が解析した地震の中から,宮城県沖で震央が直線上に並ぶ3つの地震を選び,防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netデータを使って加速度最大振幅の距離減衰特性を比較し,震源が深い地震ほど距離減衰の傾斜が急である(=減衰が強い)ことを示した。このような距離減衰特性の震源深さ依存の傾向は,従来しばしば見られるものである。

筧・笠谷(2014)のスペクトルインバージョン解析では,伝播経路特性としては震源の深さによらず同一の距離減衰(幾何減衰+内部減衰)の式を仮定している。この場合,実際は深さ依存する距離減衰特性を,震源特性やサイト特性に押しつけることになる。実際,筧(2016)が解析した3地震について,笠谷・筧(2014)が求めたsite effectを取り除いた上で加速度の距離減衰を見ると,震源の深い地震が,震源の浅い地震とほぼ同じゆるやかな傾斜を示すことがわかった。従って,笠谷・筧(2014)のスペクトルインバージョンにおいては,深い地震については距離減衰の強さを実際より過小評価していることになり,従って,震源の高周波レベルも過小評価していることになる。

この過小評価の影響を考慮すると,深い震源の高周波地震波の励起のレベルは笠谷・筧(2014)による評価より更に高くなる。すなわち,笠谷・筧(2014)の「震源が深いほど高周波レベルが高い」という結論自体は変わらず正しく,震源の深さによる高周波レベルの違いがより強調されることになる。

講演では,池浦・加藤(2011)による「隣接2観測点ペアのネットワーク」のインバージョンによる,距離減衰特性を仮定しないサイト特性評価法を用い,宮城県沖のプレート境界地震,スラブ内地震の震源特性,距離減衰特性,サイト特性について詳しく報告する。