15:30 〜 15:45
[SSS15-07] 東北地方太平洋沿岸部で発生した内陸地殻内地震による短周期地震動の距離減衰特性
キーワード:強震動、内陸地震、距離減衰特性
経験的な強震動予測の誤差を最小限に抑制することを目指し,広域の距離減衰特性を仮定せずに評価したサイト特性を用いて観測地震動の距離減衰特性を詳細に明らかにすることを試みている.今回は東北地方沿岸部の福島県浜通りと茨城県北部で発生した内陸地殻内地震についてK-NET, KiK-netの記録を用いて検討した結果を報告する.
■距離減衰特性の検討法
距離減衰特性の研究では,スペクトルインバージョン解析をはじめとして,a prioriに仮定した単純な距離減衰関数を用いて距離減衰特性と震源特性,サイト特性が推定されることが多い.しかしながら,ここではそのa prioriな仮定を検証することも念頭に置き,距離減衰特性を仮定せずに推定した相対サイト特性を用いて観測地震動から相対サイト特性の違いを取り除いた基盤地震動の水平動ベクトル和振幅を求め,それらが震源からの距離とともにどのように変化してゆくかを調べる.なお,震源からの地震波の放射に関しては,低周波数領域ではRadiation Patternや移動震源効果に起因する方位性がある.また,高周波数領域でも低周波数領域ほどは顕著でないが,やはり方位性があり,必ずしも等方的ではない.そのため,同一方向の観測記録を用いて距離に対する基盤地震動振幅の変化に注目する.
■東北~関東の相対サイト特性
本検討ではKiK-net都路地点(FKSH19)の地中観測点水平動を基準にして評価した東北~関東におけるK-NET, KiK-net地点の相対サイト特性[池浦・友澤, 2012]を用いた.この相対サイト特性は,次のように広域の距離減衰特性を仮定しないサイト特性評価法[池浦・加藤, 2011]で評価されている.まず,隣接する2地点で同時に観測した多数の地震動記録で2地点間の平均的な相対サイト特性を評価することとし,これを検討する領域内のすべての隣接観測点間(3642組)に適用した.次いで,それらの隣接観測点間の相対サイト特性が同時に満足されるように全観測地点(729地点)の相対サイトファクターを最小二乗法で評価した.なお,"隣接観測点"の条件としては地点間の距離が25km以内とし,また隣接2地点間の相対サイトファクター評価では,2地点への入射波の共通性を確保するため震源から2地点への方向の角度が5度以内の観測地震を用いている.
■福島県浜通りの地震と茨城県北部の地震の距離減衰特性
今回,距離減衰特性を検討した地震は2011/3/23福島県浜通りの地震(MJ6.0)と2011/4/11福島県浜通りの地震(MJ7.0)および2011/3/19茨城県北部の地震(MJ6.1)と2016/12/28茨城県北部の地震(MJ6.3)である.いずれの地震でも全方位の距離減衰分布は観測地震動振幅(OBS)に比べて相対サイト特性(RSF)を除いた振幅(OBS/RSF)の方がよくまとまり,距離減衰特性が観察し易くなる.ここでは,火山体周辺の高減衰領域を避け,各々の震央をとおるN15E方向の測線に注目して高周波数領域のOBS/RSFを求め,実体波の仮定(1/r)のもとでQ値減衰効果の振幅分布を検討した.その結果,(1)いずれの地震でも北側に比べて南側の方が振幅が大きめであった.また,(2)震央から±100~150kmの範囲ではQ値減衰の効果が非常に弱く,むしろ増加しているようにも見える場合があった.(3)さらにその遠方では,北側の岩手県にかけての領域では比較的単調に減少するが,南側では房総半島にかかる領域になって振幅がやや急減する傾向が認められた.このうち,(1)と(3)については震源特性の方位性および不均質な減衰構造に起因して距離に関する地震動のばらつきを増大させる要因になると考えられる.また,(2)の特徴に関しては震源からの距離を指標にした単純な距離減衰関数では解釈できないため,震源周辺の構造を考慮して震源からの地震波特性と波動伝播特性を定量的に検討してみる必要がある.
■距離減衰特性の検討法
距離減衰特性の研究では,スペクトルインバージョン解析をはじめとして,a prioriに仮定した単純な距離減衰関数を用いて距離減衰特性と震源特性,サイト特性が推定されることが多い.しかしながら,ここではそのa prioriな仮定を検証することも念頭に置き,距離減衰特性を仮定せずに推定した相対サイト特性を用いて観測地震動から相対サイト特性の違いを取り除いた基盤地震動の水平動ベクトル和振幅を求め,それらが震源からの距離とともにどのように変化してゆくかを調べる.なお,震源からの地震波の放射に関しては,低周波数領域ではRadiation Patternや移動震源効果に起因する方位性がある.また,高周波数領域でも低周波数領域ほどは顕著でないが,やはり方位性があり,必ずしも等方的ではない.そのため,同一方向の観測記録を用いて距離に対する基盤地震動振幅の変化に注目する.
■東北~関東の相対サイト特性
本検討ではKiK-net都路地点(FKSH19)の地中観測点水平動を基準にして評価した東北~関東におけるK-NET, KiK-net地点の相対サイト特性[池浦・友澤, 2012]を用いた.この相対サイト特性は,次のように広域の距離減衰特性を仮定しないサイト特性評価法[池浦・加藤, 2011]で評価されている.まず,隣接する2地点で同時に観測した多数の地震動記録で2地点間の平均的な相対サイト特性を評価することとし,これを検討する領域内のすべての隣接観測点間(3642組)に適用した.次いで,それらの隣接観測点間の相対サイト特性が同時に満足されるように全観測地点(729地点)の相対サイトファクターを最小二乗法で評価した.なお,"隣接観測点"の条件としては地点間の距離が25km以内とし,また隣接2地点間の相対サイトファクター評価では,2地点への入射波の共通性を確保するため震源から2地点への方向の角度が5度以内の観測地震を用いている.
■福島県浜通りの地震と茨城県北部の地震の距離減衰特性
今回,距離減衰特性を検討した地震は2011/3/23福島県浜通りの地震(MJ6.0)と2011/4/11福島県浜通りの地震(MJ7.0)および2011/3/19茨城県北部の地震(MJ6.1)と2016/12/28茨城県北部の地震(MJ6.3)である.いずれの地震でも全方位の距離減衰分布は観測地震動振幅(OBS)に比べて相対サイト特性(RSF)を除いた振幅(OBS/RSF)の方がよくまとまり,距離減衰特性が観察し易くなる.ここでは,火山体周辺の高減衰領域を避け,各々の震央をとおるN15E方向の測線に注目して高周波数領域のOBS/RSFを求め,実体波の仮定(1/r)のもとでQ値減衰効果の振幅分布を検討した.その結果,(1)いずれの地震でも北側に比べて南側の方が振幅が大きめであった.また,(2)震央から±100~150kmの範囲ではQ値減衰の効果が非常に弱く,むしろ増加しているようにも見える場合があった.(3)さらにその遠方では,北側の岩手県にかけての領域では比較的単調に減少するが,南側では房総半島にかかる領域になって振幅がやや急減する傾向が認められた.このうち,(1)と(3)については震源特性の方位性および不均質な減衰構造に起因して距離に関する地震動のばらつきを増大させる要因になると考えられる.また,(2)の特徴に関しては震源からの距離を指標にした単純な距離減衰関数では解釈できないため,震源周辺の構造を考慮して震源からの地震波特性と波動伝播特性を定量的に検討してみる必要がある.