[SSS15-P02] 2016年10月21日鳥取県中部の地震の震源過程解析
キーワード:震源過程、強震動、鳥取県中部地震、内陸地殻内地震
【はじめに】
2016年10月21日14:07に鳥取県中部でM 6.6の地震が発生した.震源域の直上のK-NET倉吉(TTR005)では震度6弱が記録され,最大加速度はEW成分で約1380gal,3成分合成で約1490galに達するなど,震源ごく近傍で大振幅の地震動が観測された.このような強震動の生成要因の一つとして,一般には観測点直下の地盤構造の影響が考えられる.それに加えて,この地震では多くの観測点で明瞭な2つの波群が見られ,それらの前半部分では相対的に長周期のパルス的な波が卓越するのに対して,後半では短周期成分が卓越し最大加速度が記録される地点があった.このような観測波形の特徴は震源特性を反映している可能性も考えられる.そこで,震源近傍の強震動の生成原因について検討するため,強震記録を用いて震源過程解析を行った.
【解析条件】
震源インバージョン解析には,浅部地盤構造による影響を軽減するために,KiK-net観測点の地中記録(16観測点)を使用する.さらに,震源近傍の観測記録として,震源直上のK-NET倉吉(TTR005)および震源域の南に位置するK-NET上斎原(OKY015)の記録をを合わせて解析を実施した.観測された加速度波形に0.05~0.8Hzをフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけて積分した速度波形を用いた.震源インバージョン解析に先立ち,震源付近で発生した規模が小さな地震(2016年10月21日, Mw 4.1)の観測記録を用いて観測点毎に水平成層構造モデルをチューニングし,これらを使ってグリーン関数の計算を行った.
震源インバージョン解析はマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al.(1996),引間(2012))により行った.解析の際の断層面は,気象庁一元化処理による震源位置(速報値)を基準とし,F-netによるメカニズム解や余震分布を参照して設定した.はじめに小断層サイズを2km×2kmとしてやや大きめな断層面を仮定して概略検討を行い,観測波形の再現性などを考慮して断層面のパラメータを修正した.その後,主要なすべりが推定された範囲に小断層サイズを1km×1kmとした断層面を設定して,最終的なすべり分布を推定した.
【解析結果】
最終的な断層面は走向:341°,傾斜:89°のほぼ鉛直な平面とし,長さ×幅は14km×14km程度とした.震源深さは10.6 kmである.求まった地震規模はMw 6.2 程度,最大すべり量は約1.2 mの左横ずれ成分を主とする結果が得られた.破壊開始点付近に大すべり域が存在し,破壊は主に北側に進展したと推定される.断層の北端付近にもやや小さいながら周囲に比べて大きなすべりが存在する.
【考察・まとめ】
震源インバージョンの結果,主要なすべり域は震源付近と断層面の北端付近の2ヶ所に求まった.これらは震源近傍の観測記録に見られる2つの波群に対応していると考えられる.また,断層面のほぼ直上に位置するTTR005は,破壊開始点付近から浅部に広がる大すべり域からのディレクティビティ効果が現れやすい地点に位置しており,これが観測波形の前半にパルス状の波形を生成した要因の一つであると考えられる.一方で,断層北部のすべり域はで,面積や最終すべり量は小さいがすべり速度は比較的大きな値が求まった.従って,短周期成分の励起は大きかったものと思われ,観測波形の後半部との関連が示唆される.このように,得られた震源過程は,震源近傍で観測された地震動の特徴と矛盾しない.また,最終すべり分布から静的な応力降下量を計算したところ,局所的に大きな値でも20MPa弱であり,平均的には過去の内陸地殻内の地震で求まっている値と同程度であった.
<謝辞:解析には,防災科学技術研究所K-NET, KiK-netの観測記録,F-netメカニズム解,気象庁一元化震源等を使用させて頂きました.記して感謝致します.>
2016年10月21日14:07に鳥取県中部でM 6.6の地震が発生した.震源域の直上のK-NET倉吉(TTR005)では震度6弱が記録され,最大加速度はEW成分で約1380gal,3成分合成で約1490galに達するなど,震源ごく近傍で大振幅の地震動が観測された.このような強震動の生成要因の一つとして,一般には観測点直下の地盤構造の影響が考えられる.それに加えて,この地震では多くの観測点で明瞭な2つの波群が見られ,それらの前半部分では相対的に長周期のパルス的な波が卓越するのに対して,後半では短周期成分が卓越し最大加速度が記録される地点があった.このような観測波形の特徴は震源特性を反映している可能性も考えられる.そこで,震源近傍の強震動の生成原因について検討するため,強震記録を用いて震源過程解析を行った.
【解析条件】
震源インバージョン解析には,浅部地盤構造による影響を軽減するために,KiK-net観測点の地中記録(16観測点)を使用する.さらに,震源近傍の観測記録として,震源直上のK-NET倉吉(TTR005)および震源域の南に位置するK-NET上斎原(OKY015)の記録をを合わせて解析を実施した.観測された加速度波形に0.05~0.8Hzをフラットレベルとするバンドパスフィルタをかけて積分した速度波形を用いた.震源インバージョン解析に先立ち,震源付近で発生した規模が小さな地震(2016年10月21日, Mw 4.1)の観測記録を用いて観測点毎に水平成層構造モデルをチューニングし,これらを使ってグリーン関数の計算を行った.
震源インバージョン解析はマルチタイムウィンドウ法(Yoshida et al.(1996),引間(2012))により行った.解析の際の断層面は,気象庁一元化処理による震源位置(速報値)を基準とし,F-netによるメカニズム解や余震分布を参照して設定した.はじめに小断層サイズを2km×2kmとしてやや大きめな断層面を仮定して概略検討を行い,観測波形の再現性などを考慮して断層面のパラメータを修正した.その後,主要なすべりが推定された範囲に小断層サイズを1km×1kmとした断層面を設定して,最終的なすべり分布を推定した.
【解析結果】
最終的な断層面は走向:341°,傾斜:89°のほぼ鉛直な平面とし,長さ×幅は14km×14km程度とした.震源深さは10.6 kmである.求まった地震規模はMw 6.2 程度,最大すべり量は約1.2 mの左横ずれ成分を主とする結果が得られた.破壊開始点付近に大すべり域が存在し,破壊は主に北側に進展したと推定される.断層の北端付近にもやや小さいながら周囲に比べて大きなすべりが存在する.
【考察・まとめ】
震源インバージョンの結果,主要なすべり域は震源付近と断層面の北端付近の2ヶ所に求まった.これらは震源近傍の観測記録に見られる2つの波群に対応していると考えられる.また,断層面のほぼ直上に位置するTTR005は,破壊開始点付近から浅部に広がる大すべり域からのディレクティビティ効果が現れやすい地点に位置しており,これが観測波形の前半にパルス状の波形を生成した要因の一つであると考えられる.一方で,断層北部のすべり域はで,面積や最終すべり量は小さいがすべり速度は比較的大きな値が求まった.従って,短周期成分の励起は大きかったものと思われ,観測波形の後半部との関連が示唆される.このように,得られた震源過程は,震源近傍で観測された地震動の特徴と矛盾しない.また,最終すべり分布から静的な応力降下量を計算したところ,局所的に大きな値でも20MPa弱であり,平均的には過去の内陸地殻内の地震で求まっている値と同程度であった.
<謝辞:解析には,防災科学技術研究所K-NET, KiK-netの観測記録,F-netメカニズム解,気象庁一元化震源等を使用させて頂きました.記して感謝致します.>