[SSS15-P05] 近地P波記録を用いたバックプロジェクション法による2016年熊本地震の破壊過程の推定
キーワード:バックプロジェクション法、断層破壊のイメージング、熊本地震
2016年熊本地震(M7.3)(以降、熊本地震)では、日本における観測史上初めて震度7が2回観測され、度重なる強い揺れによって、布田川-日奈久断層帯周辺を中心とした地域において甚大な被害を生じた。地震発生後、波形インバージョンにより得られた断層すべりの時空間分布が複数報告されており、深さに応じたすべり速度時間関数の違いが指摘されるなど、断層破壊の不均質性が報告されている。また、破壊の伝播方向や伝播速度は、周辺の地震動を大きく左右することが知られているが、バックプロジェクション法による破壊過程の解析結果からは、地震時の複雑な破壊過程が示されており、走向や傾斜の異なる断層面間の破壊の乗り移りや、破壊伝播速度の変化が報告されている。
断層破壊の不均質性は地震動に大きな影響を与えるが、現状の地震動予測においては、これらの不均質性の全てが考慮されているわけではない。将来の地震動予測においては、すべり速度時間関数や破壊伝播速度等の断層破壊の不均質性が考慮されることになると予想され、実際にそのための取り組みが国内外において始められている。このような状況を踏まえると、断層破壊の不均質性に関するデータを蓄積することは、将来行われるであろう断層破壊の不均質性を考慮した、より高精度で現実的な地震動予測のための震源モデル構築に不可欠である。本研究では、熊本地震の断層破壊の不均質性を、バックプロジェクション法を用いた地震放射強度の時空間分布の解析を通して調べた。
解析には、震源距離100km以内に位置する27のKiK-net、K-NET観測点の強震波形記録を用いた。地震波形は、地震計の設置方位の補正を行った後、オフセットを取り除き、木下(1986)の格子型フィルタにより積分して速度波形とした。震源位置に対する観測走時から観測点補正値を求め、走時データの補正を行うとともに、竹中・山本(2004)と同様の走時データ処理を行うことにより、放射強度の震源位置に対する相対位置の精度を向上させた。本研究で用いたバックプロジェクション法は、Kao and Shan(2004)、Ishii et al.(2005)と同様である。波形は、Hann windowを用いたN乗根スタッキングを行った。バックプロジェクション法による解析では、断層面を事前に特定しておく必要はないが、本検討では、余震分布から断層面をあらかじめ設定しておき、その断層面上での地震波強度の時空間分布を求めた。
解析の結果、破壊が日奈久断層帯から生じ、地震波放射強度を急激に増しながら布田川断層帯に乗り移り、北東へと伝播していく様子をとらえることができた。ただし、得られた結果の時空間分解能はまだ十分ではなく、今後、走時データやスタッキング法等の波形処理について、再検討を行う。
謝辞:本研究には、防災科学技術研究所のKiK-net、K-NETの強震波形記録を使用させて頂いた。ここに記して御礼申し上げる。
断層破壊の不均質性は地震動に大きな影響を与えるが、現状の地震動予測においては、これらの不均質性の全てが考慮されているわけではない。将来の地震動予測においては、すべり速度時間関数や破壊伝播速度等の断層破壊の不均質性が考慮されることになると予想され、実際にそのための取り組みが国内外において始められている。このような状況を踏まえると、断層破壊の不均質性に関するデータを蓄積することは、将来行われるであろう断層破壊の不均質性を考慮した、より高精度で現実的な地震動予測のための震源モデル構築に不可欠である。本研究では、熊本地震の断層破壊の不均質性を、バックプロジェクション法を用いた地震放射強度の時空間分布の解析を通して調べた。
解析には、震源距離100km以内に位置する27のKiK-net、K-NET観測点の強震波形記録を用いた。地震波形は、地震計の設置方位の補正を行った後、オフセットを取り除き、木下(1986)の格子型フィルタにより積分して速度波形とした。震源位置に対する観測走時から観測点補正値を求め、走時データの補正を行うとともに、竹中・山本(2004)と同様の走時データ処理を行うことにより、放射強度の震源位置に対する相対位置の精度を向上させた。本研究で用いたバックプロジェクション法は、Kao and Shan(2004)、Ishii et al.(2005)と同様である。波形は、Hann windowを用いたN乗根スタッキングを行った。バックプロジェクション法による解析では、断層面を事前に特定しておく必要はないが、本検討では、余震分布から断層面をあらかじめ設定しておき、その断層面上での地震波強度の時空間分布を求めた。
解析の結果、破壊が日奈久断層帯から生じ、地震波放射強度を急激に増しながら布田川断層帯に乗り移り、北東へと伝播していく様子をとらえることができた。ただし、得られた結果の時空間分解能はまだ十分ではなく、今後、走時データやスタッキング法等の波形処理について、再検討を行う。
謝辞:本研究には、防災科学技術研究所のKiK-net、K-NETの強震波形記録を使用させて頂いた。ここに記して御礼申し上げる。