[SSS15-P09] 計測震度の多次元距離減衰式の提案
キーワード:距離減衰式、プレート深度に比例する減衰項、AICによる選択
松浦・他 (2011) および野田・他 (2016) は、異常震域等による補正項として、観測点下のプレート上面深度を用いることで、広い周期帯、広い距離範囲に適用できる速度応答スペクトルの距離減衰式を構築した。本検討では、速度応答スペクトルと同様に計測震度の距離減衰式を構築した。
解析にはK-NET, KiK-netの観測記録を使用した。なお、地表観測記録のPGVが0.1cm/s以下およびS/N比の悪いデータは取り除いた。距離減衰式は震源タイプごとにInter-Plate, Intra-Plate, Very Shallow (VS) の3タイプに分類して推定した。なお、Inter-Plate, Intra-Plateは太平洋プレート上面あるいはスラブ内で発生した地震を対象とした。距離減衰式の式形は、代表的な周期の速度応答と計測震度の分布および減衰の傾向を比較した上で、応答スペクトルの距離減衰式と同じ形とした。
INT = Ac + Aw・Mw - b・Δ - β・log(Δ) - d・min(δ, 250) ± σ
ここで、INTは計測震度、Δは震源距離(km)、δは観測点下の太平洋プレート上面深度(km)を示す。ただし、距離についてMw>7.5の地震には震源域からの最短距離を用いた。また、δは深度250km程度で頭打ちさせることで観測の再現性が向上した。Ac, Aw, b, β, dは回帰係数、σは標準偏差である。log(Δ)に比例する減衰項の係数βは、既往の計測震度の距離減衰式では2程度で固定されることが多いが、本検討では回帰により推定した。回帰係数は、線形インバージョンによりすべて同時に推定した。ただし、震源タイプによって最適な回帰係数の組み合わせは異なり、最終的な組み合わせはAICにより決定した。
Inter-Plateは係数Ac, Aw, b, β,d の組み合わせが最適であった。従来のシンプルな式形(係数Ac, Aw, b, β)で解析した場合の標準偏差は0.691であったのに対し、係数Ac, Aw, b, β, dとした場合の標準偏差は0.643に減少し、AIC的にも優位であった。Intra-PACの係数の組み合わせはAc, Aw, β, d が最適であった。Inter-Plateでは近距離のデータを説明するのに係数bの項が必要であったが、Intra-Plateは近距離のデータが少なくlog(⊿)に比例する減衰項(係数β)とδに比例する減衰項(係数d)により観測を説明できた。Intra-Plateの係数の組み合わせを係数Ac, Aw, b, βとした場合の標準偏差は0.751であったのに対し、係数Ac, Aw, β, dとした場合の標準偏差は0.644に減少した。Inter-Plate, Intra-Plateにおいて、δに比例する減衰項(係数d)は異常震域などの減衰の違いを考慮できる有効な項であることが分かった。一方、VSにはδに比例する減衰項は必要なく、係数Ac, Aw, b, βの組み合わせが最適であった。このときの標準偏差は0.677であった。
本検討の距離減衰式(以降、提案式)の妥当性を検証するため、観測記録や既往の距離減衰式と比較した。プレート上面深度に比例する減衰項を用いるInter-Plateの地震およびIntra-Plateの地震において、提案式の予測値と観測の残差は既往式の残差に比べて広い距離範囲で小さかった。一方、プレート上面深度に比例する減衰項を用いないVSの地震に対しては、提案式と既往式の予測値は同程度であり、式ごとの残差の違いは小さかった。これらは、提案式のプレート上面深度に比例する減衰項の有効性を示唆している。
今後は、任意の地点でより精度良く予測できるように地盤増幅の補正項について検討する予定である。本検討は文部科学省からの委託によるものである。防災科学技術研究所の観測記録を使用させて頂きました。ここに記して感謝いたします。
解析にはK-NET, KiK-netの観測記録を使用した。なお、地表観測記録のPGVが0.1cm/s以下およびS/N比の悪いデータは取り除いた。距離減衰式は震源タイプごとにInter-Plate, Intra-Plate, Very Shallow (VS) の3タイプに分類して推定した。なお、Inter-Plate, Intra-Plateは太平洋プレート上面あるいはスラブ内で発生した地震を対象とした。距離減衰式の式形は、代表的な周期の速度応答と計測震度の分布および減衰の傾向を比較した上で、応答スペクトルの距離減衰式と同じ形とした。
INT = Ac + Aw・Mw - b・Δ - β・log(Δ) - d・min(δ, 250) ± σ
ここで、INTは計測震度、Δは震源距離(km)、δは観測点下の太平洋プレート上面深度(km)を示す。ただし、距離についてMw>7.5の地震には震源域からの最短距離を用いた。また、δは深度250km程度で頭打ちさせることで観測の再現性が向上した。Ac, Aw, b, β, dは回帰係数、σは標準偏差である。log(Δ)に比例する減衰項の係数βは、既往の計測震度の距離減衰式では2程度で固定されることが多いが、本検討では回帰により推定した。回帰係数は、線形インバージョンによりすべて同時に推定した。ただし、震源タイプによって最適な回帰係数の組み合わせは異なり、最終的な組み合わせはAICにより決定した。
Inter-Plateは係数Ac, Aw, b, β,d の組み合わせが最適であった。従来のシンプルな式形(係数Ac, Aw, b, β)で解析した場合の標準偏差は0.691であったのに対し、係数Ac, Aw, b, β, dとした場合の標準偏差は0.643に減少し、AIC的にも優位であった。Intra-PACの係数の組み合わせはAc, Aw, β, d が最適であった。Inter-Plateでは近距離のデータを説明するのに係数bの項が必要であったが、Intra-Plateは近距離のデータが少なくlog(⊿)に比例する減衰項(係数β)とδに比例する減衰項(係数d)により観測を説明できた。Intra-Plateの係数の組み合わせを係数Ac, Aw, b, βとした場合の標準偏差は0.751であったのに対し、係数Ac, Aw, β, dとした場合の標準偏差は0.644に減少した。Inter-Plate, Intra-Plateにおいて、δに比例する減衰項(係数d)は異常震域などの減衰の違いを考慮できる有効な項であることが分かった。一方、VSにはδに比例する減衰項は必要なく、係数Ac, Aw, b, βの組み合わせが最適であった。このときの標準偏差は0.677であった。
本検討の距離減衰式(以降、提案式)の妥当性を検証するため、観測記録や既往の距離減衰式と比較した。プレート上面深度に比例する減衰項を用いるInter-Plateの地震およびIntra-Plateの地震において、提案式の予測値と観測の残差は既往式の残差に比べて広い距離範囲で小さかった。一方、プレート上面深度に比例する減衰項を用いないVSの地震に対しては、提案式と既往式の予測値は同程度であり、式ごとの残差の違いは小さかった。これらは、提案式のプレート上面深度に比例する減衰項の有効性を示唆している。
今後は、任意の地点でより精度良く予測できるように地盤増幅の補正項について検討する予定である。本検討は文部科学省からの委託によるものである。防災科学技術研究所の観測記録を使用させて頂きました。ここに記して感謝いたします。