[SSS15-P17] 2016 年熊本地震の強震記録を用いた岡山県内のサイト特性の評価
キーワード:サイト特性、2016年熊本地震、H/Vスペクトル比
2016年4月16日1時25分に熊本県を震源とするMJMA7.3の熊本地震が発生した。西南日本を中心に広い地域で有感であり、岡山県においても岡山市南区や真庭市などで震度3を観測した。震源から岡山県内の観測点の方位角は40~50度と限られており、震源とパスの影響はほぼ同じであると見なすことができる。したがって、岡山県内で観測された地震動の違いは主に観測点直下の地盤構造が大きく影響している。本研究では岡山県内で得られたこの地震動の波形記録を解析し、各観測点における地盤増幅特性を調べた。使用した波形データは岡山県内に設置されている防災科研のK-NETとKiK-netや、自治体の震度観測網で得られた強震波形記録である。各観測点の3成分記録から地動最大加速度(PGA)と地動最大速度(PGV)の分布を求めると、北部の山間部では真庭市蒜山を除いてPGAとPGVが小さく、笠岡市~岡山市南部にかけての沿岸部及び、山間部の真庭市蒜山ではPGAとPGVが大きい観測点が見られた。また各観測点においてS相のフーリエ振幅スペクトルを計算した。スペクトルを計算する際、S相の継続時間はPolarization analysisより約11秒であることから、S波記録10秒間をコサインテーパーで切り出した。そして、地盤による影響が少ないと思われる基準観測点と各観測点のスペクトル比をとった。基準観測点には、PS検層より地下10 m付近でS波速度が2000 m/sと速く、フーリエ振幅スペクトルにも目立ったピークが見られない観測点OKYH12(美作市大原)を選定した。さらに、各観測点についてH/Vスペクトル比をとり、2種類のスペクトル比の1次ピーク周波数をそれぞれ読み取った。基準観測点とのスペクトル比とH/Vスペクトル比、それぞれの1次ピーク周波数や概形を比較したところ、沿岸部や真庭市蒜山の観測点ではほぼ対応しており、1次ピーク周波数は低い。そのほかの観測点では1次ピーク周波数は先述の2地域より高いが,H/Vスペクトル比の1次ピーク周波数の方が相対的に低くなる傾向にある。さらに、これらの結果と防災科研が公開しているJ-SHISの微地形区分や地盤増幅率を比較すると、干拓地である震度観測点3320112(岡山市南区浦安)や盆地に位置する3366450(津山市中北下)では1次ピーク周波数が低く、かつ地盤増幅率が高いため,厚い地盤によって地震波がよく増幅されると考えられる。しかし、粘土や砂が堆積した谷底低地に分類される震度観測点3321430(真庭市蒜山上福田)と3358860(真庭市蒜山下福田)ではPGAとPGVが高く、かつ1次ピーク周波数が低いものの、J-SHISの地盤増幅率は低いため、観測事実をモデルが説明できていない。この2観測点についてはJ-SHISの地盤増幅率モデルの改良が必要であると考えられる。
謝辞:防災科学技術研究所のK-NETとKiK-net、岡山県の震度観測網で得られた強震波形記録を使用しました。
謝辞:防災科学技術研究所のK-NETとKiK-net、岡山県の震度観測網で得られた強震波形記録を使用しました。