[SSS15-P22] 地震波干渉法を用いた別府湾周辺地域における深部地盤構造モデルの検証
キーワード:地震波干渉法、表面波、群速度、グリーン関数、微動、有限差分法
2014年8月下旬より,別府湾および周辺地域の深部地盤構造モデルの検証を目的として,別府湾を中心とした東西65km,南北30kmの範囲内の12地点(観測点間隔約12km)において広帯域連続微動観測を実施している(林田・他,2015;Yoshimi and Hayashida, 2017).2014年9月から2016年4月(熊本地震発生前まで)の約20か月間にわたって観測された連続観測記録に対して地震波干渉法を適用し,観測点間の相互相関関数(ZR, ZT, ZZ, RR, RT, RZ, TR, TT, TZ各成分)を導出した.観測点間ペアは66組で,観測点間距離は6.4〜65.2kmに及ぶ.相互相関関数のスタッキング処理の結果,多くの観測点ペアにおいて表面波に対応した波群が確認できた.また,波群の明瞭性も前報告(林田・他,2015)と比較して向上した.波群には,季節を問わず常に形状が類似したもの(東西方向に近い配置の観測点ペア),形状に季節変動を伴うもの(南北方向に近い配置の観測点ペア)が見られた.また,基盤岩深度が深く分布する別府湾内を跨ぐ観測点ペアでは,他の領域と比べて波群が複雑な形状となる.本研究ではまず,これらの相互相関関数が観測点間のグリーン関数に相当すると見なし,マルチプルフィルタ解析(Dziewonski et al., 1969)による表面波(Rayleigh波およびLove波)群速度の分散性の推定を行い,周波数毎の群速度の空間分布を検討するとともに,既往の地震波速度構造モデル(J-SHISモデル)より推定される理論値との比較を行った.続いて,三次元有限差分法(HOT-FDM; Nakamura et al., 2012)を用いて観測点間の理論グリーン関数を導出し,相互相関関数との比較を行った.なお,有限差分法を行う際には奥仲・他(2016)によるモデル(J-SHIS深部地盤構造モデルに陸上・海底地形と海水を付加したもの:東西90km,南北100kmの領域,グリッド間隔50m)を使用し,各観測地点上で鉛直加振および水平加振を行った際に他地点で観測される波形(0-60秒間)を計算した.陸域を結ぶ観測点ペアでは, 0.1-0.5Hzの周波数帯域において群速度およびグリーン関数の特徴を既往の地下構造モデルによって概ね再現することができるが,別府湾内を跨ぐ観測点ペアにおいては,0.3Hz以上の周波数帯域において理論値および理論波形との乖離が見られる.ただし,別府湾を挟む観測点間ペアの相互相関関数は波群が不明瞭であるケースも多いことから,波群の明瞭性や対称性など,グリーン関数としての妥当性を考慮した上での詳細なモデルの検証が必要である.
謝辞:
本研究は,文部科学省委託事業「別府−万年山断層帯(大分平野−由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」の一環として実施しました.
謝辞:
本研究は,文部科学省委託事業「別府−万年山断層帯(大分平野−由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」の一環として実施しました.