14:15 〜 14:30
[SSS16-03] 地殻の密度構造から考察するマグマ噴出量の相違
ーIBM弧と東北日本弧を例にー
キーワード:マグマ噴出量、地殻構造、IBM弧、東北日本弧
伊豆-小笠原-マリアナ弧(IBM弧)と東北日本弧では,太平洋プレートが沈み込むことに伴う火山活動がみられる.これらの地域ではプレートの沈み込み速度等のテクトニックなパラメータがほぼ同じで,火山体の線密度にはあまり差がみられないため,沈み込みに沿った単位長さ当たりのマグマの生産量はほぼ同一であると推測される.しかしながら,IBM弧における沈み込みに沿った単位長さ当たりのマグマの噴出量(10.22 km3/km)は,東北日本弧におけるそれ(1.80 km3/km)よりも圧倒的に多い.また,IBM弧で噴出するマグマの組成は主に玄武岩質であるのに対して,東北日本弧では安山岩質である.本研究では,これらの違いをうむメカニズムが,弧の地殻構造の違いにあると考え考察を行った.
IBM弧は比較的若い未成熟な海洋島弧であり,地殻の厚さは約 25 kmである.P波速度から,地殻物質は,0-5 kmでは流紋岩質,5-11 kmでは安山岩質,11-25 kmでは玄武岩質と推定される(Takahashi et al., 2008).一方,東北日本弧は成熟した大陸弧であり,地殻の厚さは約 35 kmである.P波速度から,地殻物質は,0-5 kmでは流紋岩質,5-25 kmでは安山岩質,25-35 kmでは玄武岩質と推定される(Iwasaki et al., 2001)
Perple_X(Connolly,2005)を用いて,それぞれの地殻のモード組成・P波速度構造・密度構造を求めた.Perple_Xにより計算されるP波速度が,実際の観測値と一致する地殻の化学組成を求め,この組成に基づき,地殻の密度構造を見積もった.その結果,IBM弧の地殻の密度構造は,中部地殻 2800 kg/m3,下部地殻 3100-3200 kg/m3であり,東北日本弧の地殻の密度は,中部地殻 2750-2900 kg/m3,下部地殻 3150-3200 kg/m3という結果が得られた.このように,IBM弧と東北日本弧で地殻の密度構造に大きな違いがみられる.
地殻内を上昇するマグマは,周囲の地殻の密度と釣り合うところで停留し,マグマ溜まりを形成する.地殻内を上昇するマグマを,水を 1.65 wt%含む,沈み込み帯の初生的な玄武岩質マグマ(Tatsumi et al.,2008)が結晶化し 20 %結晶を含むマグマと仮定した場合,見積もられた地殻の密度構造に基づき,IBM弧では 5 kmより浅いところで,東北日本弧では 14-21 kmの深さでマグマ溜まりが形成されることになる.
これらのマグマが,上部の低密度の地殻を上昇し,噴出するためには,さらに結晶化し,水が飽和,発泡する必要がある.Williams and McBirney(1979)に基づくと,水の飽和に必要な結晶化量は,溜まり圧力が低いIBM弧で約 50 %,東北日本弧では約 80 %となる.すなわち,地殻を上昇しマグマ溜まりを作るマグマの量が同じ場合,水飽和時のメルトの量は,IBM弧では元のマグマの約 50 %であるのに対して,東北日本弧では約 20 %となる.これらのメルトが噴出マグマと考えると,IBM弧では東北日本弧よりもマグマの噴出量が多くなる.また,仮定した地殻上昇マグマが約 50 %結晶分化した際のマグマの組成は玄武岩質であり,約 80 %結晶分化した際のマグマの組成は安山岩質である(Tatsumi and Suzuki,2009).このことはIBM弧で玄武岩質マグマの活動が活発で,東北日本弧で安山岩質マグマの活動が活発であることと一致している.以上のように,2つの弧の地殻密度構造の違いが,マグマ噴出量と噴出マグマの組成の違いを生む1つの要因として考えられる.
IBM弧は比較的若い未成熟な海洋島弧であり,地殻の厚さは約 25 kmである.P波速度から,地殻物質は,0-5 kmでは流紋岩質,5-11 kmでは安山岩質,11-25 kmでは玄武岩質と推定される(Takahashi et al., 2008).一方,東北日本弧は成熟した大陸弧であり,地殻の厚さは約 35 kmである.P波速度から,地殻物質は,0-5 kmでは流紋岩質,5-25 kmでは安山岩質,25-35 kmでは玄武岩質と推定される(Iwasaki et al., 2001)
Perple_X(Connolly,2005)を用いて,それぞれの地殻のモード組成・P波速度構造・密度構造を求めた.Perple_Xにより計算されるP波速度が,実際の観測値と一致する地殻の化学組成を求め,この組成に基づき,地殻の密度構造を見積もった.その結果,IBM弧の地殻の密度構造は,中部地殻 2800 kg/m3,下部地殻 3100-3200 kg/m3であり,東北日本弧の地殻の密度は,中部地殻 2750-2900 kg/m3,下部地殻 3150-3200 kg/m3という結果が得られた.このように,IBM弧と東北日本弧で地殻の密度構造に大きな違いがみられる.
地殻内を上昇するマグマは,周囲の地殻の密度と釣り合うところで停留し,マグマ溜まりを形成する.地殻内を上昇するマグマを,水を 1.65 wt%含む,沈み込み帯の初生的な玄武岩質マグマ(Tatsumi et al.,2008)が結晶化し 20 %結晶を含むマグマと仮定した場合,見積もられた地殻の密度構造に基づき,IBM弧では 5 kmより浅いところで,東北日本弧では 14-21 kmの深さでマグマ溜まりが形成されることになる.
これらのマグマが,上部の低密度の地殻を上昇し,噴出するためには,さらに結晶化し,水が飽和,発泡する必要がある.Williams and McBirney(1979)に基づくと,水の飽和に必要な結晶化量は,溜まり圧力が低いIBM弧で約 50 %,東北日本弧では約 80 %となる.すなわち,地殻を上昇しマグマ溜まりを作るマグマの量が同じ場合,水飽和時のメルトの量は,IBM弧では元のマグマの約 50 %であるのに対して,東北日本弧では約 20 %となる.これらのメルトが噴出マグマと考えると,IBM弧では東北日本弧よりもマグマの噴出量が多くなる.また,仮定した地殻上昇マグマが約 50 %結晶分化した際のマグマの組成は玄武岩質であり,約 80 %結晶分化した際のマグマの組成は安山岩質である(Tatsumi and Suzuki,2009).このことはIBM弧で玄武岩質マグマの活動が活発で,東北日本弧で安山岩質マグマの活動が活発であることと一致している.以上のように,2つの弧の地殻密度構造の違いが,マグマ噴出量と噴出マグマの組成の違いを生む1つの要因として考えられる.