[S-SS17] [JJ] 地震発生の物理・断層のレオロジー

[SSS17-08] 地震時の断層における炭質物熱熟成へのメカノケミカル効果の実験的検証

*市場 達矢¹、金木 俊也¹、廣野 哲朗¹、大橋 聖和² (1.大阪大学大学院理学研究科、2.山口大学理学部地球圏システム学科)

キーワード：断層、炭質物、分光分析

断層に含まれる炭質物の熟成度は，地震時の摩擦発熱，引いては剪断応力などの滑りパラメータの推定にあたり，極めて重要な情報である．ビトリナイト反射率に代表されるように，熟成度は最高履歴温度と強い相関があることが報告されている．しかし地震時の断層では，細粒化に伴う反応面積の増加や剪断に伴う結晶構造の変化などが生じるため，これらが熱熟成の進行度合いに影響する可能性がある．そこで，本研究では，炭質物の熱熟成におけるメカノケミカル効果について着目し，低速摩擦実験・加熱実験による地震性滑りの模擬および実験前後試料における分光分析を実施した．

　実験には，岐阜県新日吉鉱山産の炭質物と石英を1：9の比率で混合し，山口大設置の高速摩擦試験機にて，軸荷重3.0 MPaのもと，1.0 mm / s，10 mの剪断を与えた．次に，熱重量示唆熱分析装置を用いて，剪断ダメージを与えた試料およびインタクトな試料にて，100〜1000 °Cの高温処理を施した．その後，各試料において，顕微赤外分光器および顕微ラマン分光器を用いて，炭質物の分子構造分析を実施した．その結果，剪断ダメージの有無により，炭質物の熱熟成の進行度合いに変化が生じた．

　以上の結果，剪断に伴うメカノケミカル効果により，炭質物の熱熟成が促進されたことが確認された．これは，従来の研究での温度推定は過剰評価していた可能性を示唆している．