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[SSS17-14] 地殻変動記録を用いたトランスディメンジョナル震源インバージョンの開発
キーワード:震源インバージョン、トランスディメンジョナルインバージョン、地殻変動記録
本研究ではトランスディメンジョナルインバージョンを用いて地殻変動記録から静的すべり分布を求める新たな震源過程解析手法の開発を行った。トランスディメンジョナルインバージョンは地球物理学の分野で近年活用されてきており(e.g. Agostinetti and Malinverno 2010; Bodin et al. 2012; 2014; Hawkins and Sambridge 2015)、震源過程解析でも活用され始めている(e.g. Dettmer 2014)。震源過程解析にトランスディメンジョナルインバージョンを導入する利点として、すべり平滑化の拘束条件を事前情報として必要としない点があげられる。すべり平滑化拘束条件は物理的に妥当な解を安定的に得るために広く用いられている。しかし、すべり平滑化拘束条件を使用することは震源過程解析の分解能を大きく低下させることにつながり、観測点分布が偏っているもしくは疎である場合、事前情報に大きく影響を受けた解を得ることが多い。また、モデルの不確定性を評価する際に有用なモデルパラメータの事後分布をマルコフ連鎖モンテカルロ法などによって直接取得することができる点も利点である。
本手法では断層面上のすべり分布がグリーン関数を通して観測点での静的変位と線形に結びついた線形観測方程式を考える。簡単のために、観測方程式の誤差はガウス分布に従い、個々で互いに独立であると仮定する。断層面上の静的すべり分布は個数可変のボロノイ分割を用いて表現する。解析で求める未知パラメータは、ボロノイ点数、ボロノイ点の断層面上での位置、個々のボロノイ点のすべり量である。また、Fukuda and Johnson (2008)およびKubo et al. (2016 GJI)に則って、非負すべりの拘束条件をこの逆問題に付加する。モデルパラメータの事後分布を得るために、リバーシブルジャンプマルコフ連鎖モンテカルロ法(Green 1995)を用いる。同手法ではサンプリングステップ毎に、新たなボロノイ点の追加・既存のボロノイ点の削除・ボロノイ点の移動・ボロノイ点のすべり量の変更という四つの選択肢から一つをランダムに実行することでモデル更新していく。また、サンプリング効率の向上とパラメータ探索領域の拡充を図るために、パラレルテンパリングアルゴリズム(e.g. Sambridge 2013)を用いる。グリーン関数は半無限均質媒質を仮定したときの断層すべりによる理論静的変位をOkada (1992)によって計算する。
この新たに開発した解析手法を2015年ネパールGorkha地震(Galetzka et al. 2015; Kubo et al. 2016 EPS)におけるGNSSの実記録に適用した。同地震におけるGNSS観測点分布は疎であるために、GNSS記録は断層すべりに対して限られた分解能しか持たないと考えられる。すべり平滑化拘束条件を用いた従来手法によって解析したところ、断層面全体にすべりが分布する解が得られた。他方で新たな手法を適用したところ、カトマンズの北に大きなすべりが存在し、それ以外の領域のすべりがゼロであるというシャープなすべり分布が得られた。また、データの合い具合は新手法のほうが良かった。この結果は、震源過程解析へのトランスディメンジョナルインバージョンの導入がデータの説明に必要なすべりのみで構成される解の取得を可能とすることを示唆する。また、大きなすべりが推定された領域におけるすべりの事後分布から、複数の観測点に挟まれた領域での解のばらつきが小さい一方で、観測点から離れた領域での解のばらつきが大きいことが示された。この結果は震源過程解析に関する我々の直感的理解と整合する。
本手法では断層面上のすべり分布がグリーン関数を通して観測点での静的変位と線形に結びついた線形観測方程式を考える。簡単のために、観測方程式の誤差はガウス分布に従い、個々で互いに独立であると仮定する。断層面上の静的すべり分布は個数可変のボロノイ分割を用いて表現する。解析で求める未知パラメータは、ボロノイ点数、ボロノイ点の断層面上での位置、個々のボロノイ点のすべり量である。また、Fukuda and Johnson (2008)およびKubo et al. (2016 GJI)に則って、非負すべりの拘束条件をこの逆問題に付加する。モデルパラメータの事後分布を得るために、リバーシブルジャンプマルコフ連鎖モンテカルロ法(Green 1995)を用いる。同手法ではサンプリングステップ毎に、新たなボロノイ点の追加・既存のボロノイ点の削除・ボロノイ点の移動・ボロノイ点のすべり量の変更という四つの選択肢から一つをランダムに実行することでモデル更新していく。また、サンプリング効率の向上とパラメータ探索領域の拡充を図るために、パラレルテンパリングアルゴリズム(e.g. Sambridge 2013)を用いる。グリーン関数は半無限均質媒質を仮定したときの断層すべりによる理論静的変位をOkada (1992)によって計算する。
この新たに開発した解析手法を2015年ネパールGorkha地震(Galetzka et al. 2015; Kubo et al. 2016 EPS)におけるGNSSの実記録に適用した。同地震におけるGNSS観測点分布は疎であるために、GNSS記録は断層すべりに対して限られた分解能しか持たないと考えられる。すべり平滑化拘束条件を用いた従来手法によって解析したところ、断層面全体にすべりが分布する解が得られた。他方で新たな手法を適用したところ、カトマンズの北に大きなすべりが存在し、それ以外の領域のすべりがゼロであるというシャープなすべり分布が得られた。また、データの合い具合は新手法のほうが良かった。この結果は、震源過程解析へのトランスディメンジョナルインバージョンの導入がデータの説明に必要なすべりのみで構成される解の取得を可能とすることを示唆する。また、大きなすべりが推定された領域におけるすべりの事後分布から、複数の観測点に挟まれた領域での解のばらつきが小さい一方で、観測点から離れた領域での解のばらつきが大きいことが示された。この結果は震源過程解析に関する我々の直感的理解と整合する。