JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] [JJ] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2017年5月21日(日) 09:00 〜 10:30 A09 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)、座長:谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、座長:福島 洋(東北大学災害科学国際研究所)

10:15 〜 10:30

[SSS17-18] 2011年東北沖地震で誘発された仙台大倉ダム周辺の群発地震活動-詳細な震源分布と微細断層構造

*吉田 圭佑1長谷川 昭1 (1.東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)

キーワード:地殻流体、摩擦強度、2011年東北沖地震、群発地震

1. はじめに
地震は、地球内部の弱面に働くせん断応力が摩擦強度に達したときに生じる。従って、地震を発生させる要因には大きく分けて2つ、すなわちせん断応力を増加させる効果と摩擦強度を低下させる効果とがある。
2011年東北沖地震後、日本列島の広い範囲にわたって地震活動が誘発されたが、それらの中にはΔCFFが減少したにも拘らず誘発されたものがある。それらの活動は、共通して、1) 震源の移動がみられる、2) 活動開始が東北沖地震の発生から数日~数週間遅れる、などの特徴を示すことから、東北沖地震に伴う東西伸長に起因して深部から上昇してきた流体による間隙圧の増加に伴って摩擦強度が低下したことにより引き起こされたと推定されている (吉田・他,2012; Terakawa et al., 2013:, Okada et al., 2015; Yoshida et al., 2016)。
本研究では、断層強度を低下させ地震を発生させる流体の挙動を詳細に調べる目的で、東北沖地震で誘発された仙台大倉ダム周辺の群発地震活動について、その震源分布と時間変化を詳細に調べた。この活動域の東に隣接した長町-利府断層の最深部では、1998年にM5.0の地震が発生している。地震後行われた臨時地震観測等により、震源域直下の地殻中部に顕著なS波反射面が存在し (Umino et al., 2002)、下部地殻には顕著な地震波低速度域が分布している(Nakajima et al., 2006) ことがわかっている。
この群発活動について、気象庁一元化カタログに記載されている2,485個の地震の震源分布を見てみると、やや東傾斜するものの、およそ 4 kmほどの幅でcloud状に広がっており、migrationの詳細が明瞭には分からない。そこで本研究では、格段に高分解能の描像を得る目的で、地震波形の相関を用いて地震間の走時差を精密に求め、それに基づいて相対震源決定を行うことにした。

2. 方法・結果・議論
最初に、地震波形の相似性に基づいて地震群の分類を行った。震央距離20 km以内の観測点のうち3点以上で地震波形の相関係数が 0.92を超える地震ペアが存在する場合、その2つの地震を「相似地震」とみなすことにした。そして、相似地震グループの少なくとも一つと相似な地震も相似地震とみなすこととして、その作業を繰り返した。その結果、30個以上の地震を含む相似地震グループが 7つ得られた。
次に、震央間距離 2 km以内の地震同士で、カタログ記載あるいは計算したP波とS波の相互相関関数を計算し、それが最大になるときの値と時間差を求めた。規格化した相関値が0.9以上の場合の時間差データを用いて、カタログS-P時間差を修正してみると、元々同一グループで S-P時間が最大0.2s程度ばらついていたものが、0.05s以内の範囲に集中するようになった。波形相関により得られた時間差データを、一元化震源記載のP, S波到達時刻データに加えて、Double-Difference法 (Waldhauser & Ellsworth, 2002)を適用することにより、震源の再決定を行った。波形相関により得られた走時差残差は 120msecから10 msecまで減少した。
その結果、震源は、やや東傾斜するcould状にばらついた分布から、複数枚のsharpな面状構造へと大きく変化し、相似地震グループは、それぞれ共通する面に集中して分布するようになった。面の多くは西傾斜だが、なかには東傾斜や、水平方向に並ぶものもある。水平に並ぶ震源のメカニズム解を見てみると、節面の一つも水平方向を向き、この面に沿う断層運動で発生したことを示す。このような水平断層は、広域応力場から見て unfavorably-orientedであるため、震源のmigration同様、断層強度の低下を示唆する。震源のmigrationを、新たに再決定した震源分布で見てみると、それらは面に沿って主に深い方から浅い方に移動することがわかった。直下のS波反射面から上昇した流体の移動経路を見ていると推定される。

3. まとめ
精密な震源再決定により、仙台大倉ダム周辺の群発地震活動の震源は、一元化震源にみられていたcloud状にばらついた分布とは大きく異なり、sharpな幾つもの面上に集中することが分かった。それらに沿って震源がmigrationしており、メカニズム解は、地震がこれらの面に沿う断層運動で発生していることを示している。東北沖地震による東西圧縮応力の低下で直下のS波反射面から上昇してきた流体による摩擦強度の低下が、この活動を引き起こしたと推定される。