JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] [JJ] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)

[SSS17-P11] 室内水圧破砕実験時に発生するAcoustic Emissionに対するモーメントテンソル解析の試み

*直井 誠1西原 健吾1山本 和畝1矢野 俊介1藤戸 航1陳 友晴1石田 毅1川方 裕則2赤井 崇嗣3黒澤 功3 (1.京都大学、2.立命館大学、3.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:アコースティック・エミッション、水圧破砕、モーメント・テンソル

水圧破砕技術は,高温岩体地熱開発やシェールガス・オイル開発に利用されており,造成された亀裂のモニタリングにはしばしば地震観測が用いられる. 水圧破砕を円孔周りの応力集中問題として考えた場合,造成されるき裂は最大圧縮軸に沿う開口型になると予想されるが,実際の生産現場で観測された微小地震の解析では,せん断型が支配的との報告が多くなされている(e.g., Maxwell, 2013).例えば,シェールガス・オイルの開発では,造成き裂の閉塞を防ぐためにプロパントと呼ばれる亀裂支持剤を注入するが,引張型の地震が支配的であればプロパントがより入りやすいと考えられ,水圧破砕時に発生する地震の震源メカニズムを調べることは重要である.しかし,実際の生産現場では,コストの問題からメカニズム解を十分拘束できる観測網が展開できない場合が多く,はっきりとした結論を出すのが難しい.
本研究では一軸圧縮下で花崗岩試料を用いた室内水圧破砕実験を行い,実験時に生じる微小破壊(Acoustic Emission; AE)を十分な数のAEセンサで計測し,これにモーメントテンソル解析を適用することを試みた. AEセンサは一般に特性が複雑であり,また,個々のセンサの接着状態が感度に与える影響の補正が難しいために,振幅を精度良く測定する必要があるモーメントテンソル解析は困難である.本研究では,実験開始直前に各AEセンサから他のAEセンサに波を発振するという試験をあらゆるセンサの組み合わせで実施し,得られた振幅値からセンサの感度係数を逆解析で求めるキャリブレーション手法(e.g., Kwiatek et al. 2013)を適用することで,接着状態が感度に与える影響を評価・補正した振幅データを用いて,モーメントテンソル解析を実施した.解析の結果得られたモーメントテンソル解を,Knopoff and Randall(1970)の手法で等方成分,剪断成分,CLVD成分に分解し,いずれかの成分が50%以上を占める場合に等方(圧縮・爆発)型,剪断型,CLVD(開口・閉合)型と分類したところ,剪断成分が卓越するイベントが20%–55%を占めたのに対し,開口成分や閉合成分が卓越する解も10–20%程度得られた.また,CLVD成分が卓越する解の開口軸を調べたところ,古典的な理論で予測される載荷軸沿いの開口亀裂を示唆する解が支配的であった.