[SSS17-P21] 序列外スラスト分岐断層近傍の割れ目分布の特徴:三浦半島浅間断層を例として
キーワード:序列外スラスト、ダメージゾーン、古応力解析、間隙水圧
断層面上の間隙流体は断層運動に影響を与えるため、断層周辺の流体の挙動を理解することは、地震の発生メカニズムの解明において重要である。プレート沈み込み帯では、付加体の形成に伴い、デコルマから序列外スラスト(OST)が派生することがあるが、OSTが堆積物中より絞り出された流体の流路となることがわかっている。付加体が形成されている所では、付加体の形成に伴う側方圧縮により、堆積物中から流体が絞り出され、高間隙水圧が発生しやすくなると考えられる。高圧状態の間隙水は周辺岩石の割れ目に流れ込むと考えられるが、断層周辺には断層活動の影響によって形成されたと考えられる割れ目が多く存在し、流体移動の痕跡であるカルサイトなどの鉱物脈(空隙に鉱物が埋められた割れ目)がOST沿いの地表面露頭に観察されることがある。以上のことから、OST沿いの割れ目の分布や特徴を調べることは、OST近傍での流体の挙動の評価において重要である。本研究では神奈川県の三浦半島南端に位置するOSTと考えられる城ヶ島スラストの分岐断層である浅間断層を対象に、その周辺の割れ目の分布と特徴の調査を行った。また断層周辺の鉱物脈の方向分布にビンガム分布をフィッティングすることで応力状態を推定する岩脈法(山路, [1])を用いて、古応力解析および間隙水圧の推定を行った。
浅間断層は、走向がN 84°W、傾斜が70°Nの逆断層である。浅間断層の中心部付近では、黒色ガウジ(幅:約1 cm)・断層角礫(上盤側に幅20 m程度)・剪断帯(下盤側)を確認し、断層中心部(断層ガウジ、断層角礫)の幅が約20 mあることを確かめた。顕微鏡観察より、鉱物の配列が断層面に平行にそろっている様子を断層ガウジで確認でき、断層角礫は断層面から斜めに断層ガウジと同様の様子が確認できた。50 cm四方の枠組みを用いて割れ目密度を測定したが、断層中心部付近で密度が大きく、断層面から約100 m離れるまで割れ目密度が減少している事が確認でき、約100 m以遠では割れ目密度の減少はほとんど見られなかった。よって、ダメージゾーンと呼ばれる断層近傍の割れ目帯を断層面から約100 mとした。ダメージゾーンの内部の割れ目の走向は、それ以外の部分に比べて上盤側ではN10 ~ 40°W方向に集中していて、断層の走向に近いことを確認した。下盤側は調査範囲が限られていて、断層中心部から約100 m以内の領域までしか割れ目を測定できなかったが、割れ目の走向はN50 ~ 80°Wの方向に集中していて、上盤側と同様に断層の走向に近いことを確認した。このことは、ダメージゾーンが断層に伴って発達したことを示唆すると考えられる。浅間断層の上盤側では、断層に沿って100 m以内に炭酸塩鉱物脈が認められる事がYamamoto et al.[2]より報告されているが、現地での調査より、断層面から上盤側に約80 ~ 200 m離れた範囲の間で多くの鉱物脈を確認した。鉱物種はカルサイトであると考えられ、N50~80°Eの走向の鉱物脈がやや多い傾向が見られた。また、岩脈法の結果より浅間断層周辺はNNE-SSW方向伸長の正断層型応力場とNNW-SSE方向圧縮の逆断層型応力場を経験していると推定し、間隙水圧は逆断層型応力場の時の方が正断層型応力場の時よりも高かったことが確認された。
[1] 山路(2012)地質学雑誌, 第118巻, 第6号, 335-350
[2] Yamamoto et al.(2005) TECTONICS, VOL, 24, TC5008
浅間断層は、走向がN 84°W、傾斜が70°Nの逆断層である。浅間断層の中心部付近では、黒色ガウジ(幅:約1 cm)・断層角礫(上盤側に幅20 m程度)・剪断帯(下盤側)を確認し、断層中心部(断層ガウジ、断層角礫)の幅が約20 mあることを確かめた。顕微鏡観察より、鉱物の配列が断層面に平行にそろっている様子を断層ガウジで確認でき、断層角礫は断層面から斜めに断層ガウジと同様の様子が確認できた。50 cm四方の枠組みを用いて割れ目密度を測定したが、断層中心部付近で密度が大きく、断層面から約100 m離れるまで割れ目密度が減少している事が確認でき、約100 m以遠では割れ目密度の減少はほとんど見られなかった。よって、ダメージゾーンと呼ばれる断層近傍の割れ目帯を断層面から約100 mとした。ダメージゾーンの内部の割れ目の走向は、それ以外の部分に比べて上盤側ではN10 ~ 40°W方向に集中していて、断層の走向に近いことを確認した。下盤側は調査範囲が限られていて、断層中心部から約100 m以内の領域までしか割れ目を測定できなかったが、割れ目の走向はN50 ~ 80°Wの方向に集中していて、上盤側と同様に断層の走向に近いことを確認した。このことは、ダメージゾーンが断層に伴って発達したことを示唆すると考えられる。浅間断層の上盤側では、断層に沿って100 m以内に炭酸塩鉱物脈が認められる事がYamamoto et al.[2]より報告されているが、現地での調査より、断層面から上盤側に約80 ~ 200 m離れた範囲の間で多くの鉱物脈を確認した。鉱物種はカルサイトであると考えられ、N50~80°Eの走向の鉱物脈がやや多い傾向が見られた。また、岩脈法の結果より浅間断層周辺はNNE-SSW方向伸長の正断層型応力場とNNW-SSE方向圧縮の逆断層型応力場を経験していると推定し、間隙水圧は逆断層型応力場の時の方が正断層型応力場の時よりも高かったことが確認された。
[1] 山路(2012)地質学雑誌, 第118巻, 第6号, 335-350
[2] Yamamoto et al.(2005) TECTONICS, VOL, 24, TC5008