JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] [JJ] 地震発生の物理・断層のレオロジー

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:松澤 孝紀(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、飯沼 卓史(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、谷川 亘(国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所)、向吉 秀樹(島根大学大学院総合理工学研究科地球資源環境学領域)

[SSS17-P23] 延岡衝上断層をはさむボーリングコアの主要・微量元素の規定的要因

*長谷川 亮太1山口 飛鳥1北村 有迅2石川 剛志3福地 里菜1芦 寿一郎1 (1.東京大学新領域創成科学研究科 / 大気海洋研究所、2.鹿児島大学大学院理工学研究科、3.海洋研究開発機構高知コア研究所)

沈み込み帯においてプレート境界から分岐する巨大分岐断層は,津波を伴う地震の発生源であると考えられている.延岡衝上断層は,日本列島に帯状に配列する付加体のひとつである九州四万十帯を北帯(白亜系および古第三系)と南帯(古-新第三系)に二分する低角衝上断層であり,過去に海底下で巨大地震を発生させた衝上断層であると言われている.上盤と下盤で顕著な岩相・変成度の違いが見られ,輝炭反射率から見積もられた上盤下盤それぞれの最高比熱は320~330°C,250~270°Cであり,大きな温度差が見られる.断層の変位によりこの温度差が形成されたと仮定すると,断層の総変位量は10 km程と推定される(Kondo et al., 2005).
2011年に行われた延岡衝上断層掘削計画(NOBELL)によりこの断層を貫くコア試料が採取され,以降その試料を用いた様々な分析が行われている.本研究では,延岡衝上断層掘削計画により採取された試料を用いて,深度ごとの化学組成分析を行い,プレート境界より派生する巨大分岐断層の断層運動にともなう元素,鉱物組成の変化から,断層運動と間隙流体との相互作用を明らかにする.主要元素と微量元素の分析に加え,鉱物組成の分析を行うことで断層運動時の構成元素,鉱物の二点からアプローチを行う.
 高知コアセンター設置のXRF (Rigaku ZSX), ICP-MS (Agilent 7700x ICP-MS) を用いて断層帯中軸部 (principal slip zone; PSZ) から採取した38のサンプルから主要・微量元素をそれぞれ測定した.主要元素分析の結果の値に対して主成分分析を行った結果,PSZ内でSi, Na の減少とそれに伴うKの増加が認められた.これは熱水変質に伴う曹長石のイライト化反応の可能性を示唆している.Fukuchi et al. (2014) は,同ボーリングコアを用いたイライトの結晶化度の分析の結果から,断層帯におけるイライトの結晶化度は熱水による相互作用に影響される可能性を示した.ボーリングコアのXRDを使った鉱物組成と主成分分析の結果を比較すると,イライトの増減は確認できなかったものの,PSZにおける曹長石の消失が確認された.
また,ほぼ全ての元素がPSZ直上において大きく値が変動していた.微量元素には熱水と敏感に反応する元素が多く,断層運動時にPSZ直上で岩石と高温流体との反応が起こったことが想定される.しかし厳密には数センチ単位でピークを示す元素が異なり,PSZ上部では炭酸塩鉱物の濃集が起こったほか,その位置から3cm下では流体との相互作用が起こりやすいCsがピークを示すなど各元素により特徴的なピークを示していた.
  本研究結果から断層運動時の流体の岩石に対し起こり得る影響について明らかとなったが,剪断面沿いで起こる断層運動時の元素や鉱物組成の変化を明らかにするには,今後更に細かいスケールでかつ適切な位置からのサンプリングと分析を行う必要があると考えられる.