JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT57] [EJ] 合成開口レーダー

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:宮城 洋介(防災科学技術研究所)、小林 祥子(玉川大学)、山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、森下 遊(国土交通省国土地理院)、座長:山之口 勤(一般財団法人 リモート・センシング技術センター)、座長:小林 祥子(玉川大学)

14:30 〜 14:45

[STT57-10] InSARとGPSデータの解析による台湾の非地震性地殻変動の観測

*塚原 弘太郎1高田 陽一郎1 (1.北海道大学 大学院理学院)

キーワード:InSAR、GPS、ALOS、PALSAR、非地震性地殻変動

一般にInSARによる非地震性地殻変動の検出は困難である。これはInSAR画像に地殻変動と同程度の長波長の誤差が含まれていることが原因である。そこで本研究では、InSAR画像をGPS速度場を用いて補正することで台湾南西部の非地震性地殻変動を検出することを目的とする。台湾南西部は大きな地震が観測されていない地域であるが、非常に変形速度が大きいため非地震性地殻変動の検出を期待できる。またGPS観測網が整備されているため、それを用いて長波長のノイズを補正することが出来る。先行研究ではCバンド衛星を用いて観測を行っているが(Huang et al, 2016)、植生に覆われた地域の地殻変動を検出できていない。そこで、本研究では植生を透過するLバンド衛星であるALOSおよびALOS2のデータを使用した。
 上昇軌道のデータとしては、2007年3月4日と2009年10月25日のペア(1)、2008年4月21日と2011年3月15日のペア(2)、2008年6月6日と2010年10月28日のペア(3)を、下降軌道については2007年2月18日と2008年11月23日のペアを用いて干渉画像を作成した。これらのペアは時間基線長が大きいこと、垂直基線長が小さいこと、そしてペア同士が独立であることを基準として選別した。干渉処理にはGAMMAを、DEMにはSRTMを使用した。
 三枚の上昇軌道の干渉画像をGPS速度場(Tsai et al., 2015)を用いて補正したところ、互いに類似した速度場が得られた。これらの画像をスタックしてさらにノイズを軽減した。また下降軌道の干渉画像も同様に補正を行った。これらの画像を用いて2.5次元解析を行い準上下・準東西方向の変位を得た。準上下方向成分を見ると南北約25km、東西約5kmの範囲で、図1のように激しい隆起が起こっている。南部よりも北部の方が隆起速度が速く、また西部では隆起速度は滑らかに変化しているが東部では急激に変化している。水準測量の側線は隆起が見られる範囲の南部の一部を通っており(図1)、最大隆起速度は年間約20mmである(Ching et al., 2016)。これに対してInSARによって観測された最大隆起速度は年間約45mmと遥かに大きい。また、隆起を起こしている領域の東端では、準東西方向の変位速度場に大きな不連続が見られる。この地域では近年大きな地震は起こっていないため、我々がInSARで検出した激しい地殻変動は非地震性のものである。隆起域南部の速度は水準測量の結果と調和的であり、精度良く補正することが出来ていることが分かった。
 Ching et al (2016)では水準測量の結果を断層運動だけでは説明できず、mud diapirも必要であるとしている。我々が発見した研究地域北部の激しい地殻変動も断層運動だけで説明することは難しく、mud diapirが重要な要素であると思われる。一方ALOS-2で2016年2月5日に発生したMeinong地震(M6.4)に伴う地殻変動を観測したところ、隆起域の東端(図1のAA’)に変位の不連続が見られた。従って、我々が検出した非地震性の隆起運動は本質的にはmud diapirによって駆動されているが、既存の断層も弱面として利用していることが分かる。

謝辞
Yoko Tuさんからは台湾のテクトニクスについてコメントを戴いた。
本研究で用いたALOS、ALOS-2データはPIXEL(PALSAR interferometry Consortium to Study to Evolving Land surface)において共有されているものであり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学地震研究所との共同研究契約によりJAXAから提供された。