JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT59] [JJ] 地震観測・処理システム

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 A04 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、座長:汐見 勝彦(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:新谷 昌人(東大地震研)

14:45 〜 15:00

[STT59-04] 光ファイバーをセンサーとして用いるDASテクノロジーを使った地震波観測システムの進歩

*木村 恒久1 (1.シュルンベルジェ)

キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、地震波観測、地震、津波

DASテクノロジーが、パイプラインのモニタリングや侵入者を感知するために、2011年頃から石油・ガス産業で使われており、位相差データを用いる最新の光ファイバーセンシング技術によって、近年、DASシステムを使って、VSPを含むサイズミックデータを記録することができるようになったことを昨年の発表で紹介した。我々はこのシステムのことを、‘hDVS’と呼んでいるが、その第三世代の装置が2016年後半に完成した。

hDVSは、通常用いられるジオフォン等の電気・磁気的なセンサーでなく、光ファイバーを振動計測のセンサーとして使う。実際には、光ファイバーの振動に対するダイナミックストレインを計測しており、シングルモードファイバー、マルチモードファイバーの両者に使うことができ、つなげたファイバーの全長、もしくはパラメータで決めた長さだけをセンサーとして使うことができる。光ファイバー内での光の減衰や、光データのサンプリング周波数にも依るが、シングルモードファイバーの場合、第二世代のシステムでは、最大40km程度の長さまで対応することができ、マルチモードファイバーの場合、その長さが10km程度までとなる。第三世代の新しいシステムを使えば、50kmの長さを超えるシングルモードファイバーにも対応することができると思われる(hDVS/DASを使うことのできる理論的な光ファイバーの最大長は100km)。また、ラボの実験では、S/N比が、15dB向上したことが確認されている。

hDVS/DASを用いたシステムは、現状の地震波観測システムと比較して、次のような特長がある。

a)既に設置してある光ファイバーを、地震波観測のセンサーとして用いることができる。
b)一つのシステムで、点ではなく、最大50kmを超える長さの線状のセンサーとして観測することができる。
c)既に張り巡らされている光ファイバー網を利用することによって、観測装置を容易に観測ネットワークとして構築できる。
d)空間分解能やゲージ長をパラメータとして設定できる。
e)光ファイバーのコア部は、石英ガラスでできており、通常のセンサーを設置できない200℃以上の環境下でも、問題なく使える。
f)光ファイバーセンサーは、受動センサーなので、故障を起こしにくい。
g)万が一、地震・津波でファイバーが切れた場合でも、切れた箇所までのファイバーを用いて、観測を継続できる。
h)波長分割多重方式を用いて、1本のファイバーを、通信と地震波観測の両方に使える可能性がある。

その他にも特長として認識される性質が見つけられるだろう。