JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT59] [JJ] 地震観測・処理システム

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

[STT59-P03] 地震動波形から推定したDONET2地震計の方位

*中野 優1 (1.独立行政法人海洋研究開発機構)

キーワード:海底地震計、南海トラフ

南海トラフにおける地震・津波の早期検知、地殻活動の監視と構造解明、そして巨大地震の準備プロセスの解明とモニタを目的として、熊野灘にDONET1が、潮岬沖から室戸沖にかけての室戸海盆にはDONET2が構築された。DONET2観測点は2016年3月までに設置が完了した。また、DONET1と2の観測網の間のギャップを埋めるために、潮岬沖の海域に新たに2観測点が追加され、DONET1は計22点となった。地震動波形の解析において、正確な地震計方位の把握が重要である。DONET1観測点においては中野ほか(2012)で推定されている。本研究ではDONET2およびDONET1に新規に設置された2観測点の地震計の設置方位を推定した。また、DONEET1のKMA03観測点は2015年12月にセンサーを改修したため、設置方位を再度推定した。
 地震計方位の推定は、遠地地震における水平動成分の粒子軌跡が、陸上観測点と相似となる方位を探索することで行った(汐見ほか, 2003)。方位の基準とする陸上観測データとして、F-net観測点のうち紀伊半島および四国の沿岸に設置された5点(KIS, KMT, NOK, ISI, UMJ)を用いた。解析に使用した地震は、2015年3月から2017年1月末までに起きたマグニチュード7以上の遠地地震(31イベント)である。F-netのKISおよびISI観測点は南北成分の方位が真北から数度ずれているため、webサイトで公表されている方位を用いて修正を行った。
 DONET各観測点の広帯域地震計の水平動記録に0.008-0.01 Hzのバタワース型帯域通過フィルタを適用して方位推定に用いた。水平動二成分の波形を1°ずつ回転させて陸上観測点の南北および東西成分波形と相互相関をそれぞれ計算し、その和が最大となる角度からDONET地震計の方位を推定した。すべてのイベントに対して、すべてのDONETおよび陸上の観測点の組み合わせについて相関を計算し、水平動二成分の相互相関係数の和が1.7より大きい場合の方位の平均から地震計方位を推定した。ここで、イベントや観測点の組み合わせによっては長周期成分のノイズのために平均から大きくずれた方位を示す場合があった。方位の平均を推定後、標準偏差が10°より大きい場合には、平均から10°以上異なる方位のデータを除去するロバスト推定を行った。方位推定の最終的な標準誤差は1°から2°程度であった。
 今回、比較のためにDONET1観測点についても同様の推定を行った。中野ほか(2012)における同じ手法で推定した場合と比べ、最大4°程度の違いが見られた。違いの大きい観測点は、特に中野ほか(2012)の推定において使用したデータの数が少ない場合が多い。これは、解析期間が観測点構築から間もないためであった為であると考えられる。
 DONET2観測点方位の推定についても同様の事が言え、推定に用いたイベントの少ない観測点では数度程度の誤差があると考えられる。全観測点の設置が完了したのは解析期間の中盤であり、またいくつかの観測点では後埋設が行われていないために長周期成分のノイズレベルが相対的に大きい。これらの観測点では使用できるイベントが少なくなるため、推定精度が低下する可能性がある。今後、後埋設を行い、より長期間のデータを使用することで推定精度を向上していく必要がある。また、中野ほか(2012)で行われたP波初動の振動方向を用いた推定などを併用することで、精度の向上が期待される。
謝辞:解析にはF-netおよびDONETのデータを使用しました。観測網を維持、管理されている皆様に感謝いたします。