JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT59] [JJ] 地震観測・処理システム

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:吉見 雅行(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

[STT59-P05] 防災科研Hi-net震源カタログに基づく発破頻発地域の抽出

*汐見 勝彦1 (1.国立研究開発法人防災科学技術研究所)

キーワード:防災科研Hi-net、発破、東北地方太平洋沖地震、震源カタログ

日々の微小地震震源カタログ整備において,砕石・採鉱発破などの人工的な震動源の情報は震源リストから除外すべき要素のひとつである.防災科研が定常的に運用している震源決定システムでは,あらかじめ砕石・採鉱のための発破が頻発すると想定される地域と時間帯をデータベースに保持し,決定した震源情報がこのデータベースに設定された情報に該当する場合,当該イベントを自動的に発破(人工地震)と判断する,あるいは確認を促す.一方,発破地点等の人工的な震動源は,工事地点の移動や採鉱地の新設・廃止等により時間的に変化する(例えば,岡田, 1996).今回,2008年4月から2016年3月までの8年間の防災科研Hi-netの震源カタログを用いて簡便な方法で直近の発破頻発地域を抽出するとともに,東北地方太平洋沖地震前後の変遷について調査した.

通常,砕石発破や工事発破は昼間の時間帯に実施されることが多い(岡田,1996;平・津村,2001).Hi-netの8年間の震源カタログにおいて,手動で発破と確認されたイベントの発生時刻を確認したところ,7時から19時までの12時間に全ての発破の99.5 %が集中していたため,この時間帯を本検討における発破対象時間帯とした.発破頻発地域判定の選定にあたっては,直近3年間(2013年4月から2016年3月)に発生した震源深さが10 kmより浅い全イベントを対象とした.また,日本列島を東西,南北それぞれ0.025度のセルに分割し,各セルを発破頻発地域判定単位とした.まず,各セルのイベントの90%以上が発破対象時間帯に偏重して発生しているセルを領域EVTとして抽出した.この際,イベントの検測状況(自動・手動)の違いや発破と確認されているかどうかは判断基準としていない.この他,同期間で手動検測により発破と判断されたイベントが集中している領域MANおよび現行情報としてデータベースにマスタ情報として既に登録されている領域MASも抽出した.各領域の分布を比較し,MANとして抽出されたセルは全てEVTでも抽出されていることを確認した.また,MASに登録されているにも関わらず,EVTで検出されなかったセルが700箇所以上存在した.逆に,MASで登録されていないがEVTとして検出されたセルが約240箇所存在した.次に,8年間のデータについて,これらのセルにおけるイベントの発生状況の確認を実施した.その結果,前者には,そもそもイベントが検知されていないセルのほか,発破と通常の微小地震活動が混在し発破対象時間にイベントが偏らない事例や,発破と思われる活動がある時期に明瞭に終了した事例が存在した.後者については,特定の時期から活動が開始している事例やMASと隣接するセルであることが多く,新たな採鉱が始まったことや震源決定精度の問題が示唆される.

次に,2011年東北地方太平洋沖地震前後の発破地域の変遷を確認するため,地震直前(2009年3月から2011年2月),地震直後(2011年4月から2013年3月),最近(2014年4月から2016年3月)の各2年間のデータを対象に,発破対象時間に90%以上のイベントが集中しているセルの抽出を行った.その結果,地震前には活発な発破が確認された岩手県および宮城県を流れる北上川沿いや福島県浜通り地方,茨城県日立市付近で地震直後には発破が検知されなくなったことに加え,岩手県や秋田県の内陸部でも活動が著しく低下した地域が存在したことを確認した.一方,近年ではそれらの地域の多くで活動が再開しているほか, 岩手県周辺,福島県浜通り,茨城県北部で発破頻発地域が拡大している.このことは,震災復興需要による採鉱量の増加や工事範囲の拡大を反映していると考えられる.