JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] [EE] 火山分岐現象の理解

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC46-P07] 阿蘇火山において2016年10月8日の爆発的噴火に先行した地殻変動について

*大倉 敬宏1吉川 慎1井上 寛之1 (1.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設火山研究センター)

キーワード:阿蘇火山、爆発的噴火、クラック状火道、地殻変動

はじめに
 2016年10月8日の午前01時46分に、阿蘇火山中岳第一火口で爆発的な噴火が発生した。この噴火では,噴煙高度が1.1万mに達し,熊本県はもとより大分県・愛媛県・香川県の広範囲で降灰が確認された.この噴火に先立ち、明瞭な地殻変動が観測されたので報告する。

阿蘇火山の活動について
 近年の阿蘇火山では、1989年-1993年の噴火以来となるマグマ噴火が2014年11月25日に発生し、2015年5月3日まで継続した。その後、2015年9月および10月にマグマ水蒸気噴火が発生したのち、2016年3月まで散発的に水蒸気噴火が発生した。そして2016年4月16日の熊本地震本震の直後にごく小規模な噴火が発生した後は、噴火のない状態が継続していた。

観測坑道について
 京都大学火山研究センターでは、1987年以降、中岳第一火口から南西に約1km離れた地点の地下30mにある本堂観測坑道で地震観測や地殻変動観測などを実施してきた。この坑道は等辺長約25m,斜辺長約35mの直角二等辺三角形の形状を有し、坑道内にはインバール棒伸縮計3成分、水管傾斜計2成分、広帯域地震計が設置されている。伸縮計および傾斜計のデータは、22bit,1秒サンプリングでA/D変換されたのち、リアルタイムで火山研究センターに転送されている。この地殻変動観測施設では、2013年9月、2014年1月、2014年7月に長周期地震活動の活発化と二酸化硫黄放出量の一時的な増大をともなう明瞭な歪み変化と傾斜変化がとらえられていた。

爆発的噴火に先行した地殻変動
2016年7月ころから、マグマ溜まりをはさむGPS基線長で伸びの加速が観測されはじめた。それと同時に、本堂ではマグマ溜まり方向の隆起をしめす傾斜が観測されはじめている。その後の9月20日ころから、火口方向の伸縮計で伸びが観測され、10月2日ころからそれが加速するとともに、火口方向が沈降する傾斜が観測されている。同時に火山性地震の発生回数が増大し、10月7日には11000トン/dayの二酸化硫黄放出が気象庁により観測されている。上で述べた地殻変動は、地下深部のマグマだまりから供給される火山ガスの量が一時的に増加し、クラック深部を膨張させたことにより、引き起こされたものと解釈することができるであろう。これらの変動は、2013年9月や2014年1月にも観測されていたが、今回の変動がこれまでで一番顕著であった。