JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] [EE] 火山分岐現象の理解

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC46-P09] 2015年8月桜島マグマ貫入イベントに伴う地震の震源分布
~Matched Filter Methodによる推定~

*大見 士朗1井口 正人2為栗 健2中道 治久2 (1.京都大学防災研究所地震防災研究部門、2.京都大学防災研究所火山活動研究センター)

キーワード:桜島、地震活動、マッチド・フィルター法、半自動震源決定処理

§はじめに:
2015年8月15日午前7時過ぎから桜島の島内で活発な群発地震が発生し、同時に伸縮計等にも急激な地殻変動が観測され、大規模な噴火が危惧される状況となった。この地震活動は同日9時から13時の間に集中して発生し、14時以降には地震発生数は減少していった。このような状況では、進行しつつある地震活動の状況を即時的に把握することはひじょうに重要なこととなる。本報告では、8月15日から8月16日にかけての地震活動の推移をMatched Filter Method (MFM)を用いて解析した結果を報告する。本解析の目標は、本手法により地震活動の推移を現象とほぼ同時進行にかつ効率的に把握できるかどうかを試みることである。解析には、大見(2015)による、MFMによる地震検出と震源決定を組み合わせた手法を用いた。

§対象地域とデータ解析の概要:
Fig.1に今回報告する対象地域を示す。使用したデータは震源域周辺の、京都大学および気象庁により運用されている微小地震観測点のうち10観測点のデータである。■が観測点を示す。MFMでのイベント検出は、対象とする地震とテンプレート地震(以下、TP地震)の距離が大きい場合や、両者のマグニチュードの差が大きい場合には検出効率が低くなることがあり、TP地震の選択方法が重要となる。TP地震を選択する手法としては、既存TP地震との震源距離の差やマグニチュードの差に一定の閾値を設けて新規のTP地震を選択する方法が考えられる。しかしながら今回の活動の場合、震源が比較的狭い範囲に集中していたことに加え、同様の震源位置をもつイベントでも波形の特徴が時間と共に変化していく様子が見られたことから、震源距離やマグニチュードの差のみを選択条件とすることは得策ではないように考えられた。そのため、従来からのSTA/LTA方式でトリガ判定を行う自動処理において、TP地震候補選択のためのトリガレベル(STA/LTA)を通常より大きく設定し、S/Nが高い比較的少数のイベントのみを候補とすることとした。ここでは、使用したすべての観測点でSTA/LTAが5.0以上になったイベントを候補地震とし、さらにこれらを再検測して比較的容易に震源決定できるイベントをTP地震として採用した。この条件で選定されたTP地震は8月15日の早朝から13時までの期間で56個であった。新規TP地震が選定された場合には、そのTP地震でそのつど期間中の全データのスキャンを行い、新規TP地震によるイベントの検出と全イベントリストの再構成を行った。Fig.1にはこれらのTP地震の分布も示す。

§解析結果:
Fig.2にMFM解析の結果による8月15日から8月16日までの震源分布およびその時空間分布を示す。ここにはMFMで検出された地震をすべてプロットしており、引き続く震源決定処理の結果の精度による選別は行っていない。MFMによる解析(Fig.2)では、2日間に56個のTP地震によって約1900個の地震が検出・震源決定された。それによれば震央には主に桜島南岳から北岳の周辺に分布し、深さは海抜下4km付近から0km付近に分布する。また、震源が最も浅いのは15日9時から12時ごろの活動であることなどが把握できる。これらの傾向は、気象庁(JMA)による精査の結果(第133回火山噴火予知連絡会資料、2015)などと比較しても調和的である。

§考察と課題
MFMによる自動処理とJMAの精査の結果を比較すると、両者には共通の傾向が見られる。震源分布の差は、解析に使用した観測点の分布等の差によるものが主たる要因と考えられるが、TP地震によっては、P波とS波の識別が困難なイベントも散見され、これによるTP地震の震源決定の不確定さに起因する部分があることも予想される。MFMの結果は自動処理結果であることから、MFMで認識されてもJMAで認識されていない震源クラスタが存在するような場合は解析上の虚像である可能性もあり、今後個別の震源データを比較・精査することは必須である。さらに、これに関連して、MFMで検知された地震の震源決定精度を向上させる手法の精度向上も必要と考えられる。しかしながら、今回の解析では56個という比較的少数のTP地震の選定によって得られたMFM解析の結果の特徴と、精査を経たJMAの解析結果の特徴に共通点も多く見られることから、群発地震の進行中にその概要を同時進行的に把握するための手段として本手法は有用であると考えられる。