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[SVC47-02] LPイベントの振動体サイズおよび流体特性の時間変動:草津白根山とガレラス山の比較
火山活動の活発化に伴い観測される地震のうち、long-period (LP)イベントは熱水割れ目といった振動体中の流体の振動により発生すると考えられている。この振動体としてクラックモデル(Chouet, JGR, 1986)を仮定し、その固有周波数と観測されたLPイベントのスペクトルピーク周波数を比較することで、振動体中の流体特性やサイズが推定されてきた。最近Maeda and Kumagai (GRL, 2013; GJI, 2017)によりクラックモデルの固有周波数の解析式が提案されたことで、この比較を系統的かつ容易に行うことが可能になった。Taguchi et al. (AGU meeting, 2016)では、この解析式を用いた手法により群馬県の草津白根山およびコロンビアのガレラス山で発生したLPイベントの解析を行った。その結果、この解析手法により複数の観測ピーク周波数を説明でき、そこからすべてのクラックモデルのパラメータを推定できることが示された。本研究では草津白根山およびガレラス山で発生したLPイベントの解析数を増やし、クラックのサイズおよび流体特性の時間変動について調べた。
草津白根山については1992年8月から1993年1月、ガレラス山については1993年1月6日から10日にかけて発生したLPイベントを解析に用いた。クラック内の流体として草津白根山についてはミスト状ガス(Kumagai et al., JGR, 2002)、ガレラス山についてはダスト状ガス(Gil Cruz and Chouet, JVGR, 1997)を仮定し、クラックモデルのパラメータを推定した結果、両火山に共通して以下の2つの特徴が見られた。(1)クラックの体積が大きいとき、クラックの長軸方向の長さ(L)とクラックの厚さ(d)の比L/dは小さい。ここで開口クラックの弾性変形を考えるとクラック内の圧力とL/dが反比例することから、L/dが小さいことは、クラック内の圧力が大きいことを示している。(2)クラックの体積が大きい時、クラック中の流体のガス質量分率も大きい。したがって、クラックに供給される流体のガス質量分率が大きいほどクラック内の圧力も大きくなり、クラックが押し広げられてその体積も大きくなることを示している。さらにそれぞれの火山について、以下のような特徴が見られた。(3)草津白根山では、1992年8月から11月の間にクラックの体積は10-1 m3から103 m3まで増加し、その後1993年1月にかけて10-1 m3程度まで減少した。さらに、クラック中の流体のガス質量分率については、8月から11月の間に10-2から約1まで増加し、11月から1月にかけて10-2まで減少した。(4)ガレラス山のイベントに関しては、1993年1月7日から10日にかけて、クラックの体積は103 m3 から10-1 m3、クラック内の流体のガス質量分率は10-1から10-3まで減少した。
草津白根山とガレラス山のLPイベントはそれぞれ熱水活動とマグマ噴火活動という異なる活動に伴い発生すると考えられているが、(1)と(2)の特徴はLPイベントの発生過程が2つの火山で類似していることを示唆している。草津白根山において(3)で述べたようなクラック中の流体のガス質量分率が増加するという傾向は、先行研究によって指摘されている。しかしながらクラックの体積を一定と仮定した先行研究と異なり、本研究はこの期間にクラックの体積に顕著な増加が見られることを示した。ガレラス山については(4)で述べたように、先行研究では示されていなかったクラックの体積やガス質量分率の時間変動を明らかにした。さらにガレラス山において解析した最後のイベントの数日後に噴火が観測されており、このことはクラックの体積やガス質量分率の時間変動がマグマ噴火の前兆的な過程により生じている可能性を示している。以上のように、推定されたクラックモデルのパラメータの時間変動を調べることで、LPイベントの発生過程に関し制約を与え、火山の地下における流体の状態変化を推定することが可能となる。
草津白根山については1992年8月から1993年1月、ガレラス山については1993年1月6日から10日にかけて発生したLPイベントを解析に用いた。クラック内の流体として草津白根山についてはミスト状ガス(Kumagai et al., JGR, 2002)、ガレラス山についてはダスト状ガス(Gil Cruz and Chouet, JVGR, 1997)を仮定し、クラックモデルのパラメータを推定した結果、両火山に共通して以下の2つの特徴が見られた。(1)クラックの体積が大きいとき、クラックの長軸方向の長さ(L)とクラックの厚さ(d)の比L/dは小さい。ここで開口クラックの弾性変形を考えるとクラック内の圧力とL/dが反比例することから、L/dが小さいことは、クラック内の圧力が大きいことを示している。(2)クラックの体積が大きい時、クラック中の流体のガス質量分率も大きい。したがって、クラックに供給される流体のガス質量分率が大きいほどクラック内の圧力も大きくなり、クラックが押し広げられてその体積も大きくなることを示している。さらにそれぞれの火山について、以下のような特徴が見られた。(3)草津白根山では、1992年8月から11月の間にクラックの体積は10-1 m3から103 m3まで増加し、その後1993年1月にかけて10-1 m3程度まで減少した。さらに、クラック中の流体のガス質量分率については、8月から11月の間に10-2から約1まで増加し、11月から1月にかけて10-2まで減少した。(4)ガレラス山のイベントに関しては、1993年1月7日から10日にかけて、クラックの体積は103 m3 から10-1 m3、クラック内の流体のガス質量分率は10-1から10-3まで減少した。
草津白根山とガレラス山のLPイベントはそれぞれ熱水活動とマグマ噴火活動という異なる活動に伴い発生すると考えられているが、(1)と(2)の特徴はLPイベントの発生過程が2つの火山で類似していることを示唆している。草津白根山において(3)で述べたようなクラック中の流体のガス質量分率が増加するという傾向は、先行研究によって指摘されている。しかしながらクラックの体積を一定と仮定した先行研究と異なり、本研究はこの期間にクラックの体積に顕著な増加が見られることを示した。ガレラス山については(4)で述べたように、先行研究では示されていなかったクラックの体積やガス質量分率の時間変動を明らかにした。さらにガレラス山において解析した最後のイベントの数日後に噴火が観測されており、このことはクラックの体積やガス質量分率の時間変動がマグマ噴火の前兆的な過程により生じている可能性を示している。以上のように、推定されたクラックモデルのパラメータの時間変動を調べることで、LPイベントの発生過程に関し制約を与え、火山の地下における流体の状態変化を推定することが可能となる。