JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールA (国際会議場 2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:熊谷 博之(名古屋大学大学院環境学研究科)、座長:森田 裕一(東京大学 地震研究所)

09:30 〜 09:45

[SVC47-03] ストロンボリ火山の山腹噴火前のキツツキ地震活動について

*近藤 弦1青山 裕1西村 太志2川口 亮平3山田 大志1三輪 学央4藤田 英輔5リペペ マウリツィオ6ジェンコ リカルド6 (1.北海道大学大学院理学研究院 附属地震火山研究観測センター、2.東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻、3.気象研究所、4.防災科学技術研究所、5.防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット、6.フィレンツェ大学)

キーワード:ストロンボリ火山、キツツキ地震活動、噴火遷移過程

イタリアのストロンボリ火山は、2014年8月7日に山腹からの溶岩流出活動に移行した。我々は、2014年5月末から翌年2015年6月まで、ストロンボリ火山の火口周辺で広帯域地震計と傾斜計による臨時観測を行い、溶岩流出活動を挟む時期のデータを得ることができた。本発表では、溶岩流出の直前にあたる7月22日(15日前)から山腹噴火までに見られた特異な地震群の波形特性について報告する。

特異な地震は、7月22日から8月6日12:00まで見られ、通常の活動期に見られる背景的な火山性微動に重なる形で、出現と消失を繰り返している。その波形は、いくつものパルスで構成されており、数分から十数分間継続した後、大振幅のパルスを起こして消失する。小休止の時間を挟みながら、パルス状の振動が繰り返し現れることから、この特異な地震群をキツツキ地震活動(woodpecker seismicity)と名付ける。キツツキ地震に対してスペクトル解析を行ったところ、卓越する周波数は見出せなかったが、およそ4Hz-12Hzの信号で構成されていることがわかった。キツツキ地震を構成する個々のパルスは波形が非常によく似ており、同一イベントの繰り返しである可能性が高いと考えられた。相似性を調べるため、一つのパルスを含む2秒間(201サンプル)の地震波形をテンプレートとして、連続波形に対して1サンプルずつずらしながら、相関係数の計算を行った。その結果、どの期間のキツツキ地震でも相関係数が0.7以上と、高くなることがわかった。テンプレートに選ぶパルス波形を変えても同様の結果が得られた。

キツツキ地震活動は溶岩流出に先行する時期に特徴的に見られることから、山腹噴火へ向けたダイク貫入に関する情報を持っている可能性が高いと考えた。そこで、キツツキ地震パルスの震源位置の時間変化を調べるために、二観測点(RFR,PZZ)で観測された地震波形に対して、同一時刻のテンプレートを使用し、相関係数がピークとなる時間の相対変化を検討した。その結果、相関係数のピークが立つ時刻には相対変化が見られないことが確認された。このことから、キツツキ地震の個々のパルスは同一の発生メカニズムと震源位置を持っていると考えられる。

キツツキ地震は、震源メカニズムや震源位置が変化しないことから、山腹へ向けたダイクの伸長を反映した活動とは考えづらい。とは言え、その活動期間を考えると、山腹噴火への分岐過程における何らかの変化を反映している可能性は依然として高い。今後はキツツキ地震と、その裏で定常的に発生している超長周期地震(VLP)との関係性についても検討を行っていく予定である。