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[SVC47-05] 連続微動から推定される阿蘇火山における小規模噴火に向けた火道開口過程:2011年5月と2014年1月のごく小規模な噴火
キーワード:阿蘇火山、火山性微動、噴火、火道システム
阿蘇火山では、数種類の火山性微動が常時発生し、古くから数多くの観測研究が行われてきた(例えばSassa, 1935)。そのうちのひとつである連続微動は、火山活動の活発化にともなって振幅が大きくなることが知られている。また、静穏期と活動期で連続微動の震源位置が変化していたことも明らかにされた(Takagi et al., 2009)。しかし、連続微動の震源移動経路やタイミング、個別の噴火発生との具体的な関係性については未だ明らかにされていない。
阿蘇火山では、2011年5月と2014年1月に火山灰放出をともなうごく小規模な噴火が発生した(気象庁2011, 気象庁2014)。どちらの噴火イベントも、噴火に先行して湯だまり量の減少と火口底中央部における火孔の開口(2011年5月10日・2014年1月2日)が観測された。火孔開口前には連続微動の振幅増大が認められ、開口後には振幅急減がみられた。火孔開口後、2011年のイベントでは、5月15日の噴火に至るまで顕著な振幅変化が認められなかった。一方、2014年のイベントでは、振幅が緩やかに増加し、1月13日に新たな火孔開口と噴火が同時に発生した。
本研究では、上記2つの噴火イベントに着目し、連続微動の震源位置を推定し、2011年と2014年における火孔開口前および噴火前に火山体内部で進行した現象について検討した。使用したデータは、2011年3月から6月と2013年12月から翌年1月の二期間において、火口周辺に設置された常設5地震観測点(京都大学火山研究センター所有)で記録された鉛直成分である。連続微動の発生位置は、観測された微動振幅の空間分布を用いた震源推定法(Battaglia & Aki, 2003;Kumagai et al. 2010)を採用し、グリッドサーチにより推定した。このとき、一次元速度構造(Sudo & Kong, 2001;筒井・他, 2003)を仮定し、Q値は阿蘇火山浅部におけるt*インバージョン法による推定(De Gori et al., 2005)の結果から40を使用した。
その結果、2011年と2014年のどちらのイベント期間においても、連続微動の震源位置は深さ400mから火口底表面までをつなぐほぼ鉛直の円柱状領域に分布することが明らかになった。推定した連続微動の震源分布は、阿蘇火山の火口列下に存在するクラック状火道(Yamamoto et al., 1999)と火口底とを結ぶ、火道システム最浅部の円柱状の流体経路を表していると考えられる。
また、活動の推移とともに震源の深さが変化したと解釈しうる結果も得られた。2011年と2014年の振幅増大前の震源は深さ200 mでほぼ一定であった。火孔開口前において、どちらのイベントにおいても連続微動の振幅が顕著に増加し、2011年では深さ100 m、2014年では深さ200 mと、イベントによって得られた震源の深さが異なった。これは、経路の確立過程を表しており、この過程は火孔の開口によって終息することが示唆される。震源の深さの違いは、その時期に確立させる経路の領域が異なっていたことが考えられる。また、噴火前には、2011年は深さ200 mから0 m、2014年は深さ400 mから200 mと、10日弱かけて震源が200 m程度浅くなり、噴火時に火口底表面付近に震源が得られる傾向がどちらのイベントでも認められた。これは、小規模噴火に至る過程を表していると考えられる。この過程においては、連続微動の振幅は顕著に変化しなかった。
これらのことから、2011年と2014年のイベントにおいて、以下のような一連の現象が流体経路で進行していたと考えられる。2011年3月からガス供給量が増加し、流体経路内が増圧することで連続微動の振幅が増大しはじめた。この増圧により、深さ100 m以浅の流体経路を押し広げる過程が発生し、顕著な振幅増大が観測された。2011年5月10日の火孔開口によって経路内圧力が減少し、振幅が急減した。この時期から、深さ200 mから振動領域が上昇し、火口底に達した5月15日にごく小規模な噴火が発生した。その後、降雨により湯だまりが復活し、活動は一旦終息する。2013年12月から再びガス供給量の増加と経路拡大過程が発生した。このとき、深さ200 m付近の経路が押し広げられた。2014年1月2日の火孔開口により振幅の急減後、小規模な経路拡大と、噴火に至る深さ400 mから深さ200 mまでの振動領域の移動とが進行する。震源の深さが200 mまで達すると、それ以浅の経路はこれまでに確立されているので、震源が火口底付近までジャンプし、2014年1月13日に新たに開口した火孔においてごく小規模な噴火が発生した。
阿蘇火山では、2011年5月と2014年1月に火山灰放出をともなうごく小規模な噴火が発生した(気象庁2011, 気象庁2014)。どちらの噴火イベントも、噴火に先行して湯だまり量の減少と火口底中央部における火孔の開口(2011年5月10日・2014年1月2日)が観測された。火孔開口前には連続微動の振幅増大が認められ、開口後には振幅急減がみられた。火孔開口後、2011年のイベントでは、5月15日の噴火に至るまで顕著な振幅変化が認められなかった。一方、2014年のイベントでは、振幅が緩やかに増加し、1月13日に新たな火孔開口と噴火が同時に発生した。
本研究では、上記2つの噴火イベントに着目し、連続微動の震源位置を推定し、2011年と2014年における火孔開口前および噴火前に火山体内部で進行した現象について検討した。使用したデータは、2011年3月から6月と2013年12月から翌年1月の二期間において、火口周辺に設置された常設5地震観測点(京都大学火山研究センター所有)で記録された鉛直成分である。連続微動の発生位置は、観測された微動振幅の空間分布を用いた震源推定法(Battaglia & Aki, 2003;Kumagai et al. 2010)を採用し、グリッドサーチにより推定した。このとき、一次元速度構造(Sudo & Kong, 2001;筒井・他, 2003)を仮定し、Q値は阿蘇火山浅部におけるt*インバージョン法による推定(De Gori et al., 2005)の結果から40を使用した。
その結果、2011年と2014年のどちらのイベント期間においても、連続微動の震源位置は深さ400mから火口底表面までをつなぐほぼ鉛直の円柱状領域に分布することが明らかになった。推定した連続微動の震源分布は、阿蘇火山の火口列下に存在するクラック状火道(Yamamoto et al., 1999)と火口底とを結ぶ、火道システム最浅部の円柱状の流体経路を表していると考えられる。
また、活動の推移とともに震源の深さが変化したと解釈しうる結果も得られた。2011年と2014年の振幅増大前の震源は深さ200 mでほぼ一定であった。火孔開口前において、どちらのイベントにおいても連続微動の振幅が顕著に増加し、2011年では深さ100 m、2014年では深さ200 mと、イベントによって得られた震源の深さが異なった。これは、経路の確立過程を表しており、この過程は火孔の開口によって終息することが示唆される。震源の深さの違いは、その時期に確立させる経路の領域が異なっていたことが考えられる。また、噴火前には、2011年は深さ200 mから0 m、2014年は深さ400 mから200 mと、10日弱かけて震源が200 m程度浅くなり、噴火時に火口底表面付近に震源が得られる傾向がどちらのイベントでも認められた。これは、小規模噴火に至る過程を表していると考えられる。この過程においては、連続微動の振幅は顕著に変化しなかった。
これらのことから、2011年と2014年のイベントにおいて、以下のような一連の現象が流体経路で進行していたと考えられる。2011年3月からガス供給量が増加し、流体経路内が増圧することで連続微動の振幅が増大しはじめた。この増圧により、深さ100 m以浅の流体経路を押し広げる過程が発生し、顕著な振幅増大が観測された。2011年5月10日の火孔開口によって経路内圧力が減少し、振幅が急減した。この時期から、深さ200 mから振動領域が上昇し、火口底に達した5月15日にごく小規模な噴火が発生した。その後、降雨により湯だまりが復活し、活動は一旦終息する。2013年12月から再びガス供給量の増加と経路拡大過程が発生した。このとき、深さ200 m付近の経路が押し広げられた。2014年1月2日の火孔開口により振幅の急減後、小規模な経路拡大と、噴火に至る深さ400 mから深さ200 mまでの振動領域の移動とが進行する。震源の深さが200 mまで達すると、それ以浅の経路はこれまでに確立されているので、震源が火口底付近までジャンプし、2014年1月13日に新たに開口した火孔においてごく小規模な噴火が発生した。