JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 コンベンションホールA (国際会議場 2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:寺田 暁彦(東京工業大学火山流体研究センター)、座長:神田 径(東京工業大学理学院火山流体研究センター)

13:45 〜 14:00

[SVC47-13] 霧島火山,えびの高原周辺の硫黄山火口の噴気活動

*田島 靖久1前野 深2中田 節也2霧島ネイチャーガイドクラブ 調査班3 (1.日本工営株式会社、2.東京大学地震研究所、3.霧島ネイチャーガイドクラブ)

キーワード:霧島火山、硫黄山、噴気

えびの高原の硫黄山火口周辺では,2015年12月14日に新たな噴気が確認され,2016年1~2月に噴気域(硫黄山噴気帯)が急速に拡大した.また,2016年2月28日に地震の増加とともに火口周辺警報が発表された(気象庁ホームページ1).3月には警報は解除されたが,その後も4月,8月にかけ高温域が緩やかに広がっていることを確認した.8月20日時点では高温域が2200m2となり,簡易的な測量では計測が困難になる程に拡大したため,2016年12月にドローンによる調査を実施した.
ドローン調査に先立ち,11月20日,22日,25日,27日に霧島ネイチャーガイドクラブのメンバーによって地温測定を実施し,50℃の範囲を測定した.また,調査前日(12月9日)には,50℃地点の修正と紙皿(直径18cm)にペイントしたマーカーを設置し,観測の準備を行った.これらのマーカー位置を把握するために,12月10日~11日にドローン(Phantom 3)による空撮を行った.空撮映像をオルソ図に変換し,空撮から得られた高温地点をオルソ図にプロットした.ドローン撮影によって得られた2016年12月10日の高温域は約3500 m2であり,8月20日の簡易測量の約2200 m2から拡大した.
拡大時期は特定できないが,硫黄山周辺では,県道1号線沿いで10月中頃から12月にかけ極めて高濃度の硫化水素(H2S)ガスが観測された(宮崎県危機管理課ホームページ2).10月29日にはネイチャーガイドクラブによって硫黄山から流れ出る川に白濁が確認されるなど,表面現象の変化が確認されている.高温域の拡大も,この頃進行した可能性が考えられる.なお,12月11日の観測翌日に地震が多発し,12月12日に噴火警報が発表され,噴火警戒レベルが2に引き上げられた(噴火警戒レベルは12月6日から運用開始,気象庁ホームページ1).ドローンによる調査では,地震多発前に噴気域が拡大していたことが確認できたと言える.2016年2月28日の地震多発の前にも高温域が急速に拡大しており,高温域の急速な拡大は火山活動の活発化を示唆するデータとなる可能性がある.水蒸気噴火では前兆となる地震増加,傾斜変動が短時間に進行することもあるため,硫黄山で見られるような高温域の拡大が意味する点を理解する必要がある.なお,2月現在硫黄山火口周辺の高温域の拡大が続いている.

1 http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/volcano.html
2 http://www.pref.miyazaki.lg.jp/kiki-kikikanri/kurashi/bosai/iouyamagasu20160226.html
霧島ネイチャーガイドクラブ:古園俊男,原口憲太郎,永友武治,東多佳路,吉永英昭,馬場みどり,高田昌志,松村幸和