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[SVC47-15] 草津白根火山・白根火砕丘周辺の熱活動
キーワード:草津白根火山、熱水系、噴気、観測井、赤外線カメラ
草津白根山は,過去130年間にわたり水蒸気爆発が繰り返し発生してきた活動的な火山である.山頂部に形成された白根火砕丘は pH が1前後の湯釜火口湖を有するほか,白根火砕丘の北側斜面の約 1 km にわたり優勢な噴気地が存在するなど,活発な熱活動が認められる.比抵抗構造調査によれば,白根火砕丘の地下浅部には低比抵抗層が存在する.微小地震や長周期地震,地殻変動,磁場変動等は,いずれもこの低比抵抗層やその下面付近で発生していること等から,この低比抵抗層は難透水性の粘土層に対応し,その下部には湯釜火口湖への流体供給を担う熱水だまりが存在すると考えられる.このような熱水だまりは水蒸気爆発の発生場に相当し,その内部状態をモニタリングを行うことは水蒸気噴火発生予測に貢献する.しかし,この熱水だまりは難透水性層で覆われているため,その熱,化学的状態の変化を直接的に測定することは難しい.
白根火砕丘周辺に認められる活発な熱活動には,時間的に顕著な変化が起きることが知られている.これは,熱水だまりから外部への流体漏出を反映したものと思われる.そこで本研究では,白根火砕丘浅部の流体流動モデルの構築を目標として,白根火砕丘の熱活動および時間変動を定量的に評価した.併せて,白根火砕丘の南東斜面に存在する温泉湧出に注目し,その化学的特徴を検討する.さらに,流体観測を目的とした観測井を2016年に掘削した.この領域に注目したのは,1927年から1943年にかけて水蒸気噴火が繰り返し発生した場所であること,1960 年代前半まで温度 148 ℃前後の噴気活動が認められ,その成分にはマグマ起源の高温火山ガスの関与を示唆する HCl や SO2 が多く含まれていたこと,現在も本領域付近の地中温度が高い,等の理由に基づく.
・夜間空中赤外線観測
2014年10月,2015年11月および2016年11月に夜間空中赤外線観測を実施した.一般に,日中は日射ために地表面温度が上昇する.その影響を低減させて地熱活動を定量評価するために,赤外線観測は日没後の18-19時に実施した.2014年については地表においても同時温度測定を行ない,空中観測で得られた温度の妥当性を確認した.このほか,近年で日中に行われた同様の空中観測として2012年および2014年がある.得られた垂直赤外画像の空間分解能は地表面付近において約 0.81 m2/pixelであり,1画像につき概ね数 100 m 程度の範囲が収録される.調査時に GPS-IMU を用いて取得した機体位置および姿勢情報に基づき,赤外画像から数値標高モデルを作成し,さらにオルソモザイク赤外画像を得ることで,地表面温度に対する面積分布を求めた.
これらの結果に基づき,白根火砕丘周辺の熱活動の推移について,噴気地面積および放熱量として定量化した.北側の噴気地については,2012年と2014年の比較では明らかな変化は認められない一方で,2015年,2016年と,高温領域が徐々に拡大していた.この変化は,2014年に観測された深部流体供給の増加が原因と考えられる微小地震や地殻変動に対応する変化と思われる.
・湯釜東河川の調査
夜間空中赤外観測によれば,白根火砕丘南東の地表面において有意な温度異常領域は検出されなかった.一方で,本領域には,合流する河川が存在しないにもかかわらず,流下とともに流量が増加し,水温が不連続に上昇する河川(湯釜東河川と呼ぶ)が存在する.この特徴は,川床での温泉湧出を示唆するものであり,夜間空中赤外線観測の結果からも,川床に複数の高温領域が認められる.その下流には,草津白根火山としては Cl⁻ や SO42- を最も高濃度で含む香草・常布温泉が存在する.
この湧出温水の起源として,湯釜火口湖からの漏水や,香草温泉へ Cl- に富む熱水を供給している二次熱水,あるいは高温火山ガスが考えられる.そこで2016年10月に河川流量測定を複数箇所で行ない,優勢な2ヶ所の湧出領域については,その湧出量と湧出温度を推定した.また,河川に沿って10数か所で採水を行うことで,川床から湧出する温水の pH,陰イオン濃度のほか,水の水素・酸素安定同位体比,および SO42- の硫黄安定同位体比を計算から見積もった.
・井戸掘削
東京工業大学は,平成28年度に草津白根山山頂周辺の観測設備の整備改修事業を実施した.その一環として,湯釜火口中心から東へ 800 m の地点に,浅部地下水のモニタリングを目的とした深度 50 m の観測井を掘削した.その結果,地表から深度 19 m 付近において地下水上面に達し,さらに孔底付近に対応する深度 50 m においては温度 31 ℃,pH が4前後の温泉水を得た.そこで深度 50 m 付近にストレーナを設け,そこから水試料を任意に採取できる仕組みを構築とした.孔内には水温や水位,pH,電気伝導度などのセンサの設置が可能であり,水温については2016年11月からテレメータを開始している.
白根火砕丘周辺に認められる活発な熱活動には,時間的に顕著な変化が起きることが知られている.これは,熱水だまりから外部への流体漏出を反映したものと思われる.そこで本研究では,白根火砕丘浅部の流体流動モデルの構築を目標として,白根火砕丘の熱活動および時間変動を定量的に評価した.併せて,白根火砕丘の南東斜面に存在する温泉湧出に注目し,その化学的特徴を検討する.さらに,流体観測を目的とした観測井を2016年に掘削した.この領域に注目したのは,1927年から1943年にかけて水蒸気噴火が繰り返し発生した場所であること,1960 年代前半まで温度 148 ℃前後の噴気活動が認められ,その成分にはマグマ起源の高温火山ガスの関与を示唆する HCl や SO2 が多く含まれていたこと,現在も本領域付近の地中温度が高い,等の理由に基づく.
・夜間空中赤外線観測
2014年10月,2015年11月および2016年11月に夜間空中赤外線観測を実施した.一般に,日中は日射ために地表面温度が上昇する.その影響を低減させて地熱活動を定量評価するために,赤外線観測は日没後の18-19時に実施した.2014年については地表においても同時温度測定を行ない,空中観測で得られた温度の妥当性を確認した.このほか,近年で日中に行われた同様の空中観測として2012年および2014年がある.得られた垂直赤外画像の空間分解能は地表面付近において約 0.81 m2/pixelであり,1画像につき概ね数 100 m 程度の範囲が収録される.調査時に GPS-IMU を用いて取得した機体位置および姿勢情報に基づき,赤外画像から数値標高モデルを作成し,さらにオルソモザイク赤外画像を得ることで,地表面温度に対する面積分布を求めた.
これらの結果に基づき,白根火砕丘周辺の熱活動の推移について,噴気地面積および放熱量として定量化した.北側の噴気地については,2012年と2014年の比較では明らかな変化は認められない一方で,2015年,2016年と,高温領域が徐々に拡大していた.この変化は,2014年に観測された深部流体供給の増加が原因と考えられる微小地震や地殻変動に対応する変化と思われる.
・湯釜東河川の調査
夜間空中赤外観測によれば,白根火砕丘南東の地表面において有意な温度異常領域は検出されなかった.一方で,本領域には,合流する河川が存在しないにもかかわらず,流下とともに流量が増加し,水温が不連続に上昇する河川(湯釜東河川と呼ぶ)が存在する.この特徴は,川床での温泉湧出を示唆するものであり,夜間空中赤外線観測の結果からも,川床に複数の高温領域が認められる.その下流には,草津白根火山としては Cl⁻ や SO42- を最も高濃度で含む香草・常布温泉が存在する.
この湧出温水の起源として,湯釜火口湖からの漏水や,香草温泉へ Cl- に富む熱水を供給している二次熱水,あるいは高温火山ガスが考えられる.そこで2016年10月に河川流量測定を複数箇所で行ない,優勢な2ヶ所の湧出領域については,その湧出量と湧出温度を推定した.また,河川に沿って10数か所で採水を行うことで,川床から湧出する温水の pH,陰イオン濃度のほか,水の水素・酸素安定同位体比,および SO42- の硫黄安定同位体比を計算から見積もった.
・井戸掘削
東京工業大学は,平成28年度に草津白根山山頂周辺の観測設備の整備改修事業を実施した.その一環として,湯釜火口中心から東へ 800 m の地点に,浅部地下水のモニタリングを目的とした深度 50 m の観測井を掘削した.その結果,地表から深度 19 m 付近において地下水上面に達し,さらに孔底付近に対応する深度 50 m においては温度 31 ℃,pH が4前後の温泉水を得た.そこで深度 50 m 付近にストレーナを設け,そこから水試料を任意に採取できる仕組みを構築とした.孔内には水温や水位,pH,電気伝導度などのセンサの設置が可能であり,水温については2016年11月からテレメータを開始している.