JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月23日(火) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールA (国際会議場 2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:山本 圭吾(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)、座長:筒井 智樹(秋田大学国際資源学部)

09:00 〜 09:15

[SVC47-19] 水準測量によって測定された桜島火山における2015年8月ダイク貫入イベント以降の地盤上下変動

*山本 圭吾1松島 健2吉川 慎3内田 和也2井上 寛之3大倉 敬宏3園田 忠臣1竹中 悠亮1中本 幹大1荒上 夏奈1手操 佳子2森田 花織2末次 秀規4滿永 大輔4長山 泰淳4 (1.京都大学防災研究所、2.九州大学大学院理学研究院、3.京都大学大学院理学研究科、4.気象庁)

キーワード:桜島火山、精密水準測量、地盤上下変動

桜島火山においては,2015年8月15日に発生したダイク貫入イベント以降,噴火活動としては比較的に静穏な状態が続いている.このダイク貫入イベント以降の地盤上下変動を明らかにすることを主な目的として,2016年11月に桜島火山において一等水準測量の繰返し観測を実施した.本講演では,この測量の結果について報告し,得られた地盤上下変動について議論する.



 水準測量を実施した路線は,海岸線に沿って桜島を一周する桜島一周道路路線,桜島西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線であり,総延長は約56 kmである.これらの路線を,2016年11月1日~24日の期間において測量に当たった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.実際の測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が桜島一周道路路線,ハルタ山登山路線,北岳路線においてそれぞれ±0.26,±0.16,±0.14,水準環閉塞誤差は桜島一周道路路線およびハルタ山登山路線において時計回りにそれぞれ1.1 mm(許容誤差12.1 mm),2.4 mm(許容誤差7.6 mm)であり高精度の一等水準測量であった.



 桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を,前回の2015年8月・9月に行われた測量結果(山本・他,2016)と比較することで,2015年8月・9月から2016年11月の期間における地盤上下変動量を計算した.



 計算された地盤上下変動量から,桜島北部付近および北岳路線の水準点において,顕著な地盤隆起(最大で20.5 mm)が生じていることが確認された.1年あたりの隆起速度に換算しても17.6 mm/yearと,1991年以降の姶良カルデラ膨張期間において最も大きい部類に属する.一方で,桜島南部の有村付近においては地盤沈降(最大で-6.8 mm)が認められた.有村付近は,経年的な局所沈降が生じている領域である.局所沈降量については,2007年~2014年の水準測量期間ごとに測定値から茂木モデルによる理論値を差し引き,それらから1年あたりの平均上下変動量を計算することで平均的な局所沈降量が求められているが(山本・他,2016),それらを考慮してなお有村付近で最大で5 mm程度の地盤沈降が生じていると考えられる.


 茂木モデルに基づき,上下変動量データから圧力源の位置を求めたところ,桜島北部の地下に増圧源が,また昭和火口の東側地下に減圧源が推定された.桜島北部地下の増圧源については,2015年8月15日のダイク貫入イベント以降,表面的な噴火活動が低調なことを反映し,地下においてマグマの貯留が進行していることを示していると考えられる.一方で,昭和火口の東側地下の減圧源については,貫入したダイクに関係したなんらかの減圧状態を反映しているのではないかと考えられる.講演では,これらの圧力源解析結果の詳細についても議論する.