JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月23日(火) 09:00 〜 10:30 コンベンションホールA (国際会議場 2F)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、青木 陽介(東京大学地震研究所)、座長:山本 圭吾(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)、座長:筒井 智樹(秋田大学国際資源学部)

09:30 〜 09:45

[SVC47-21] 重力変動から桜島の火山活動(2009年~2016年)を読み解く

*大久保 修平1山本 圭吾2井口 正人2田中 愛幸1今西 祐一1渡邉 篤志1 (1.東京大学地震研究所、2.京都大学防災研究所)

キーワード:重力、桜島火山、火道

[1] はじめに
桜島火山では2009年以降2016年7月までは、昭和火口から噴火活動が継続し、爆発回数は年間数百回から千回に達していた。ことに2015年8月15日にはダイク貫入イベントが発生し、多数の火山性地震および10cmを超える地殻変動が観測され、噴火警戒レベルが4まで上げられるなど緊迫した事態も生じた。しかし、このイベント直後に爆発・噴火活動はかえって低下し、2016年7月以降2017年2月現在にわたって噴火が認められなくなるという予想外の展開となった。仮に、噴火活動の収まった2016年8月以降を休止状態もしくはそれに準ずる状態とするなら、2009年の火山活動の活発化から2016年7月の活動の休止(準休止)までを一連のサイクルとみなすことができる。本講演ではこの火山活動サイクルのなかで観察された重力変動を紹介し、火山体内の物理現象について考察を進めたい。

[2] 重力変動の特徴とその解釈
重力観測データには、降雨等に伴う陸水変動による重力擾乱や、不圧地下水の潮汐等、火山活動とは独立な要因で変化する成分が含まれている。これらの擾乱を除去する手法については、Kazama and Okubo (2009)や、Okubo et al (2014)で開発してきた。これらの擾乱を取り除いた後の重力シグナルを調べたところ、火山活動イベントごとに、それぞれ特徴的な変動を示していることがわかった。主なものを以下(1)~(3)に記す。

(1) 数十万トン規模のブルカノ式噴火(2012年7月24日南岳A火口)
噴火の7時間前から3時間前にかけて、一旦、10 microgalの重力増加が生じた後、3時間前~噴火直前までにほぼ、同量の重力減少が見られた。
(2) 溶岩ドーム形成(2015年1月~2月昭和火口)
100 nanoradian程度の傾斜変動と、数microgal程度の重力変動の増減とがよい相関を見せた。両者の間には、タイムラグ1~2日が存在する。
(3) ダイク貫入イベント(2015年8月15日)
6 microgalの重力減少が、10 microradian 程度の地殻変動と同期して(タイムラグなし)で生じた。両者の変動のタイムスケール12時間前後で完結している。定量的にも重力も地殻変動も通常のディスロケーションモデルで良く説明できた。

上記のさまざまな特徴は、火道の「開口 ・閉塞」状態のスイッチングを反映している。すなわち(1)(2)では、火道が開口状態にあって、周囲に生じる弾性変形が小さく、重力変動の大部分が火道内のマグマ頭位変化=線質量の長さ変化ととらえることができる。一方、(3)では火道が閉塞したために、貫入マグマは弾性変形を周囲の媒質に生じさせざるをえず、その結果、重力変動には、貫入マグマの引力項に加えて、地殻の弾性変形に伴う密度場変化の影響が含まれていると考えられる。